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計画から20年 越谷駅前の再開発マンション

セコムホームライフが分譲開始


建築中の「グローリオ越谷 ステーションタワー」

 セコムホームライフが6月末に分譲開始する「グローリオ越谷 ステーションタワー」を見学した。駅前の再開発計画が持ち上がってから約20年、ようやく分譲にこぎつけたプロジェクトだ。同社は再開発組合から保留床を取得して分譲するものだ。

 物件は、東武伊勢崎線越谷駅から徒歩1分、越谷市弥生町に位置する29階建て全421戸(住戸397戸、店舗24戸)の規模。専有面積は58.18〜96.60u、価格は未定だが、坪単価は170万円。竣工予定は2012年6月。設計・監理は佐藤工業。監理は梓設計。

 現地は、急行停車駅の越谷駅東口のすぐ目の前。1階には大型スーパー、2〜3階は店舗、4階には獨協医科大学の医療施設が併設される。さらに隣接して商業施設や市民活動支援センター、図書館などからなる4階建ての公共施設と、約400台収容の4階建て駐車場が建設される。

 建物は、中央に吹き抜けを設けた変形の五角形。住戸は南西向きが中心に南向き、東向き、北向きがあり、住戸面積は70u台を中心に60u台、80u台、90u台がある。

 基本性能・設備仕様としては、セコムグループならではの他のマンションにはあまり採用されていないコンビニや銀行などの強盗対策用セキュリティシステムを住宅用に改良したIXシステム、7.2時間の利用時間を3日間に分けて利用可能な非常用発電機、24時間365日対応の様々な暮らしををサポートする「グローリオ・サポート24」などが装備されている。

 第1期分譲は60戸で、これまで問い合わせは約2,000件、来場者は約300件。販売担当のセールスマネージャー・鑑継(みつぎ)孝之氏は「震災の影響で武蔵野沿線など他の沿線への浸透度が今ひとつだが、『買ってよかった』と評価されるマンションになるはず」と語った。

  
最上階の眺望(完成予想図)          車寄せ(完成予想図)

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 駅前立地で、周囲にさえぎる高い建物がなく、坪単価170万円となれば「間違いなく売れる」といいたいところだが、そういいきれないのがこの沿線の特殊性だ。

 まず価格。坪単価170万円といえば、首都圏で分譲される超高層としては最低ラインだろう。20〜30年も前の単価水準だ。

 ところが、東武伊勢崎線のマンション価格相場としては、これ以上はつけられないという限界点に近い。かつて北千住、西新井などでは坪200万円を突破して売れた物件もあるが、長いスパンで見ると坪150万円を中心に上がったり下がったりを繰り返している。単価だけでなく、グロス価格でも制約がある沿線だ。

 同社も1期分譲として60戸しか供給しないことでも、難しい沿線であることを象徴している。

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 高い値段がつけられないのは、それだけ民力が低いといってしまえばそれまでだが、個人的には東武伊勢崎線ほど便利な鉄道はないと思っている。複々線のためまず遅延がない。広尾、六本木などの都心へも一直線だし、北千住ではJRや東京メトロ、 TX にも乗り換えられる。新越谷では武蔵野線へもつながっている。

 問題なのは、沿線全体の街の魅力が欠けることだ。記者は、街の魅力に不可欠なのは@デパート・専門店があること AホテルがあることBおいしい食事ができるレストランがあること−の3条件をあげているが、残念なことに伊勢崎線の各駅には3条件どころか1つも条件を満たすところがない。このような沿線はほかにない。

 「デパートは春日部にあるではないか」という反論もありそうだが、あの施設はデパートではない。シティホテルがないことはみんな認めるはずだ。おいしい料理が食べられるところがないというのもみんな認めるはずだ。スカイツリーが完成すれば、@とBは解消されるが、Aはない。

 この問題点を東武鉄道をはじめ各自治体が真剣に考えないと、これから激化する都市間競争に勝てないと思う。

 関連することだが、5月末に「新浦安」のブライトンホテルを訪ねた。震災でも電気も水も止まらなかっ2た施設だ。さすがに一時期、宿泊の営業は中止せざるを得なかったようだが、記者が訪ねたその日は結婚式で館内はあふれかえっていた。若者に聞いたら「新浦安か海浜幕張のホテルで結婚式を挙げるのが千葉県民のステイタス」とのことだった。

 東武伊勢崎線に住む若者は、どこで結婚式を挙げるのがステイタスなのだろう。

 話は横道にずれたが、都民も神奈川県民も千葉県民も、単価が安くて便利な東武伊勢崎線を居住地として見直してはどうだろう。みんなが移り住むようになれば、民力も高まるのではないか。


完成予想図

(牧田 司 記者 2011年6月9日)