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「被災地に公共用多目的避難ビル、道州制を」

ケンコーポ田中健介社長


田中社長

 総合ビジネス誌「財界」5月24日号に、ケン・コーポレーション田中健介社長のインタビュー記事「国家運営も企業マネージメントも危機管理を核に−『大地震・大津波地域での危機管理のキーワードは、公共用多目的避難ビル、ヘリコプター部隊、道州制導入の三つです』」が掲載されている。被災地はもちろん、日本の再生にも示唆する指摘が多いので、田中社長と「財界」誌の了解を得て、その一部を以下に紹介する。

◇      ◆      ◇

「道州制」のさきがけとして東北六県を東日本州≠ノ

 −復興政策も兼ねた国のあり方について、田中さんの意見を聞かせてください。

 田中 明治初期に廃藩置県が行われ、現在では四十七都道府県になっていますが、地球上での距離が縮まり、国土も狭い日本の行政単位としては長すぎます。

 この地方では、何百年に一度の大津波と言われていますが、地球温暖化等の異変が続き、近年、日本列島の地震発生の頻度が格段に高まっていることから、五〜十年以内に、この地方のみならず、関東や東海地方にまた同様の大地震や大津波が起こりかねないのです。

 州制度になっていれば、とりあえず州内であらゆる相互支援や協力、補完等をし合えます。被災者の人々や生徒たちの緊急受け入れ、自治体、役所の共同使用や職員の提供等、あらゆる協力がいつでもできるようになるでしょう。

 −それでは、被災地の復興については、どのような意見をお持ちですか。

 田中 小中学校や住宅は、必ず高台に造り、あるいは移し変えたりし、大津波が来た時に山間地まで逃げるのが間に合わないような平地の中央には、屋上を指定大避難場所とする最低五〜六階建ての堅牢な公共用多目的比避難ビルを造っておくべきです。

 普通はスポーツや音楽ライブ、イベント会場等、市民の諸々の文化活動ができるようにしておけば、以後その地域の諸文化や活動の殿堂となるでしょう。そして、海岸を含めた広い平地は、世界的な大津波地域のモデルにされるような、画期的な都市計画に基づいて再建されるべきです。

 なお、電力が片時も欠かせない病院や一定以上の規模のビルには、自家発電装置の設置を義務付けることです。

 地震国・日本のビルの耐震力は特に一九八一年に定められた新耐震防災基準法により、以後のビルは世界でもトップレベルの耐震力があります。今回のマグニチュード九・〇の大地震でも、仙台等でほとんど倒壊はありませんでした。阪神大震災の場合も同様でした。

 したがって、東京の場合でも怖いのは、大津波や大洪水による浸水被害です。今回も高速道路や道路交通が麻痺してしまいました。ですから、今後の大地震対策は、前述したように、初動にヘリコプター部隊を即刻出動させることがキーになるのです。

 ピンポイントでの被災民の捜索・救助のスタッフや、諸資材・救援物資を積んでリアルタイムに捜索・分配して行くのです。

(略)

国も企業もレベル7までの危機管理を

 −原発事故は深刻な問題になりましたね。

 田中 政府は原発事故に伴う放射能漏れを当初楽観していた節があり、原発大国のフランスや米国から直ちに支援やコンサルタント派遣の申し出があったのを日本政府は断ったそうですが、これも初動の大失敗といえるでしょう。

 まるで、小さな火の不始末をしでかした子どもが自分で消そうとしてままならず、結局大火災になってしまったような印象を受けます。

 これは厳しく言えば、サッカーのオウンゴールのような人災と言えるのではないでしょうか。本来、今回のような大津波や原発事故のように重大結果を招くような危機管理には、「未曾有」とか「想定外」という言葉は使うべきではないんです。

(略)

 −ところで、御社は危機管理を非常に重視していますね。それについて話してください。

 田中 私は創業以来、信用をとことん高めることが無限の資本金にも匹敵し、将来の成長や発展の土台になると確信し、信用を傷つけたり失ったりしないよう、社業の方向や事業の選択も慎重に行ってきました。また、昔から社員教育には力を入れ、「ケン社会人大学」を目指してきました。

 例えば、当社の経営の基本方針の中心に、「志、王道、コンプライアンス、危機管理」を据えていますし、これまでもいくら儲かっても、リスクの高い投機的な事業や風評被害を生む恐れのある事業は避けてきました。

(後略)

(牧田 司 記者 2011年5月18日)