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有楽土地の「交通費キャッシュバック」に思う

 有楽土地が4月26日 (火) から会員組織「クラブオーベル」を発足し、モデルルームに来場する際の交通費を一部負担する「交通費キャッシュバックサービス」をはじめ、住まいに関する様々な情報・サービスをWEBを中心に提供すると発表した。

 「交通費キャッシュバックサービス (契約者対象) 」はデベロッパーとしては初の試みで、同社が不動産会社の会員組織サービスについてWEBアンケートを実施した結果、「遠方からの来場時に交通費を負担してくれる」「モデルルームへの来場時にアンケートの記入を不要とする」などに高いニーズがあったことから、実施に踏み切ったという。

 記者も、このキャッシュバックサービスには大賛成だ。この種のサービスは、これまで販促の手段として図書カード、テレフォンカード、クオカードなどが配布されたときもあったが、恒常的なサービスとして実施するのは同社が初めてだろう。

 ユーザーが家族でマンションモデルルームを見学すると、場所にもよるが交通費のほか食事代などもかかる。家族4人だと1日に数千円から1万円ぐらいかかるのではないか。この費用を、契約者に限って一部負担するというのは歓迎すべきことだ。

 「来場の際にアンケートの記入を不要とする」ことに対しては、同社は「モデルルームに来場した際にアンケートの基本情報を記載しておき、来場時の負担を軽減」し、「ID ・パスワードを入力するだけで会員の登録情報が自動表示され、WEB上での資料請求・来場予約の手続きを簡略化」するとしている。

 これは今ひとつよく分からない。ユーザーは来場時にアンケート記入を「強要してほしくない」と思っているのだ。記者はもう20年も前から、このアンケート記入を止めるよう主張してきた。初めて来場したユーザーにいきなり住所、氏名、年齢、電話番号、家族構成、職業、勤務先、居住形態、年収、自己資金はもちろん、購読紙誌まで求めるものもある。それこそ個人情報を全て記入させる。アンケートに答えないと、モデルルームを見せないという雰囲気もある。

 これは実に失礼なことだ。こんなことを行っているのは、おそらく不動産業界だけだろう。このようなアンケートを取る前に、ただの見学か、きちんと説明して欲しいのかなどユーザーが何を望んでいるのか聞けば済むことだ。説明が不要な人には自由に見てもらえばいい。それだけ無駄が省ける。

 説明を望む人に対しても、アンケートに記入させるより、マンツーマンで話しながらユーザーの希望を聞き、デベロッパーの伝えたいことを伝えたほうがよほどユーザーに好感されるだろう。紙に年収を書かせるより、ユーザーが進んで年収を打ち明けるような営業マン教育をするべきだろう。「マンション来場者が少ない」と各社は嘆くが、「来させないようにしている」と気づくべきだろう。

 そもそも、デベロッパーがマンションの来場者1人あたりに掛ける広告宣伝費は数万単位ではない。数十万単位だろうこれほど経費を掛けて、来場者に占める契約者の割合、いわゆる歩どまりは 10 〜 25 %ぐらいだ。契約者1人当りの広告宣伝費は数百万円になる計算だ。

 この歩どまりの低さをデベロッパー各社は考えたほうがいい。その原因の一つは、「ただの見学者」も母数に含めているからだろう。「ただの見学者」を母数から除けば歩どまり率ははるかに向上するのではないか。「ただの見学者」には対応しなければ、それだけ経費も少なくて済む。DM費も削減できるはずだ。

 もう一つは、やはり商品企画を充実させることだ。大量供給の時代はとっくに終わった。立地の特性を最大限に生かし、「これは素敵」というプラン、設備仕様をどう盛り込むかだろう。売れない<}ンションを見ていると「どこも似たり寄ったり」というものが多い。「どこも似たり寄ったり」だったら、価格が安い、より安心なデベロッパーをユーザーが選択するのは当たり前だろう。

 有楽土地に関しては、上場も廃止したのだからさすが大成グループ≠ニいう商品を供給して欲しい。かつてオードリー・ヘプバーンをイメージキャラに起用してヒットした「ティアラの丘」がなつかしい。

(牧田 司 記者 2011年4月28日)