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ニッセイ基礎研究所 震災アンケート予測を覆そう

 
 ニッセイ基礎研究所が昨日(4月19日)「震災と不動産市場に関する緊急アンケート」結果をまとめ発表した。

 「震災が不動産市場に与える影響の大きさ」に対する回答として「非常に深刻」(広域的かつ長期的)と答えた人が28.4%にのぼり、「深刻」(広域的だが短期的)と回答した人の26.8%、「やや深刻」(地域限定的だが長期的)の34.9%を含め90.1%の人が「深刻」と答えている。

 「震災が不動産市場に与えるマイナスの影響」として、原発や震災のリスクから海外の投資家が日本の不動産を忌避する動きや、経済成長率の低下による不動産需要の低迷などを多くの人が指摘している。

 「今後、選別が厳しくなると懸念される不動産タイプ」としては、「分譲マンション」がもっとも多く、52.1%の人が「厳しくなる」と予測している。消費マインド悪化に伴う購入意欲の減退や高層マンションでの停電リスク、湾岸エリアでの液状化リスクなどをその理由として上げている。

 「今後、不動産市場で重視されるリスク」については、「東京一極集中リスク」がもっとも多く56.3%、「震災・津波リスク」が50.6%だった。

 「大規模な災害リスクと対峙していく為に必要な考え方」としては、「建築・都市インフラの防災性能の大幅な強化」を上げ、「エネルギー政策の転換」については34.5%にとどまった。

 アンケートは、4月11日から18日にかけて、不動産分野の実務家・専門家など1,051名を対象に行い、261名から回答を得た(回収率24.8%)。

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 アンケート結果は、予想されたものとはいえ、記者もショックを受けた。正直に言えば、このようなアンケートを実施してほしくなかったし、回答もして欲しくなかった。世界最大級の震災の被害にとどまらず、「想定外」の津波と原発による被害と影響、さらには「計画停電」など誰もが「深刻」と受け止めているそのさなかに、このようなアンケートを実施する意味が果たしてあるのか。

 「回答」する側からすれば、「深刻」と答えざるをえないだろうが、記者が問われたら絶対に回答しない。震災後、マンション取材ができなかったから「深刻」な記事は書いてきた。とくに「液状化」についてはしつこいほど書いた。しかし、これはあくのでも今後の液状化にわれわれはどう備えればいいのかを探るためであった。

 その一方で、業界が取組んでいる被災地支援・復興や義援金についても、公表した企業についてはほとんど網羅できていると思っている。義援金の総額は住宅・不動産業界全体で70億円(商社や鉄道会社など主な事業が他業種も含む)から80億円に達しているはずだ。「義援金」競争も呼びかけた。

 書くことで自分自身も「元気」をもらい、少しは業界に「元気」を発信したいという思いからだ。

 事態は言うまでもなく「深刻」だ。例えば湾岸。記者は、ここ2〜3年の間に湾岸エリアだけで1万戸のマンション事業計画があると読んでいる。ここでへたり込んだら2度と立ち上がれない。バブル崩壊よりリーマンショックよりはるかに大きなダメージを受けることになる。

 しかし、それでも記者は戸建ても含めてだが、「マンションは地震に強い」と主張する。電気が止まればエレベータも止まり、調理ができず、トイレも風呂も利用できなくなるのは当たり前ではないか。液状化はインフラをズタズタにしたが、戸建てはしっかり立っていたではないか。これ以上のことをどうして求めなければならないのか。そのリスクを回避するには、どれだけのコストをかければいいのか。分かっている人がいたら答えて欲しい。

 オール電化を見直す動きもあると聞く。「何をたわけたことを」と言いたい。われわれは、電気が震災でもっとも早く復旧することを阪神・淡路で学んだのではなかったのか。だからオール電化が普及した。電気かガスかではなく「電気もガスも」の視点で取組んで欲しい。

 われわれは「評論家」であってはいけない。いかに苦境を打破するか実践するか。この一点に業界の将来がかかっている。アンケートに答えなかった約75%、790人の実務者が記者と同じ考えに立つならば、アンケートの予測を簡単に覆すことができる。業界を上げてこの「逆風」に立ち向かって欲しい。

(牧田 司 記者 2011年4月20日)