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東日本大震災でマンション現場はどう変わったか

これから何をアピールするか

 

 東日本大震災から 1 カ月が経過した。震災後、分譲各社は軒並み「自粛」したため、記者は1件のマンションも見ていない。しかし、震災後 1 カ月が経過し、徐々に販売態勢を整えるようになってきた。ユーザーも動き出したようだ。そこで、マンションの販売現場の声を拾った。聞いたのは、@震災によって販売現場はどう変わったかAこれから何を訴えるか−についてだ。

●都心の低層マンション

「震災前に予約制のモデルルーム見学のDMを送付したが、震災の影響はほとんど受けていない。逆に50〜60件予約待ちが出ているほどだ。

 来場者の中には、震災で影響を受けられる会社経営者が先行き不透明なことから再検討される方がいたり、マスコミ関係者は震災の仕事で忙しくリスケジュールされたりする方もいる。また、湾岸からの買い替えを希望される方も多い印象を受ける。将来のローン金利を気にされる方もいる」

●都心の高額マンション

「地震後は構造に対する質問が増えており、当社は地震に強く、免震が売りの一つだとは説明しているが、いやらしい営業活動はしていない。粛々とやっている」

●都内の郊外マンション

「震災後、来場者は3分の1に減った。地震に過剰に反応されているようだ。当社で言えば、都心のマンションは逆に来場者が増えている。 ここは駅からやや距離あるが、75uが2,000万円台半ばで買える。今後、資材が値上がりするはずだから、これをアピールしたい」

●千葉の郊外マンション

「来場者の絶対数は減っている。しかし、現在の住まいに(耐震性の)不安を感じていらっしゃる方の来場が若干増えたような印象を受ける。

 ここは地盤が安定しており『安全・安心』をアピールしているが、やりすぎるといやみにも聞こえるので難しいところ」

●都心のコンパクトマンション

「震災後は来場が鈍ったが、4月に入って賃貸とか戸建てに住んでいらっしゃる住宅に不安を持っている方の来場が増えた。そういう意味で二極化が見られる。分譲は昨年11月からだが、もうすぐ完売する。

 会社としては地震対策とかオール電化の見直しも考えている」(オール電化の見直しをするところは増えているようだが、記者は過剰反応すべきではないと考える。オール電化かガスかという選択肢ではなく、ベストは電気もガスもだ。双方が併用できるのが一番いい。ハイブリット調理台も開発されている。単純な発想ではなく、柔軟な発想が必要だ=記者注)

●都内の郊外マンション

「購入動機が社宅の入居期限が切れるとか、出産で家族が増えるとか、入学とかなどの高いレベルで探している人はむしろ動いている。逆に、中長期的に考えている人はやや動きが鈍った。

 ここは郊外ですがリゾート≠売りの一つにしているので湾岸エリアを考えていた人の流れが向かってきており、震災後のほうが契約ペースは高まっている。社内では『安くしすぎた』という声も出ているぐらいだ。それほどお客様のレベルが高い。

富士山が見える∞海が見える≠ニいうキーワードは売れる要素で、リゾートもそれほど落ちていない。ただ、海で生活の場を築こうと考えていることには今回の地震は大きな影響を受けたのではないか。

 今回の震災はリーマンショックとよく似た部分もあるが、リーマン後は、マンション業者そのものが激減している。需給状況が一変したから、いまはどこも落ちていないんではないか。

 これからは耐震性、太陽光、エコ、省エネなどがキーワードになるが、これらを盛り込めば群を抜けるのではないか」

●東京湾岸免震タワーマンション

「震災後、お客様の来場が減っているのは事実。しかし、東京都の湾岸エリアではしっかりとした液状化対策がなされていると思う。都のホームページを見ても、大規模な共同溝が設置されていることがわかる。

 液状化を懸念される方にはこうした液状化対策をきちんと伝えることが必要。地震については構造などがしっかり伝えられる材料を調えている」

●埼玉の大型マンション

「各社そうだと思うが、震災後、広告などを自粛しているため来場は減っている。しかし、ゼロではなく、むしろ地震に強いマンションとか新しいマンションに住み替えようと言うお客様はいる。今後は、安心して住める場所(用地)を選定基準にしなければならないと思う」

●千葉の湾岸マンション

「分譲はこれから。液状化は全くなかった。これから集客するがおそらく大丈夫。値段を下げることも考えていない。湾岸がダメという記事なら載せて欲しくない」

●都内の郊外マンション

「震災後、2週間は来場が落ちたが、かなり持ち直してきている。お客様はより真剣に検討されている方が多い。今後はより詳細な情報をきちんと伝えていくことが必要」

●千葉の郊外大規模団地

「来場者は2週間ぐらい前から戻ってきた。海(湾岸)で検討していた人も数は多くはないが来られている。ここは地盤がいいところだから、それほど打撃は受けていない。

 震災に対する取組としては、震災後すぐに全世帯6,000世帯にお米1.5キロを無料で配布し、高齢者世帯などは全戸訪問した。近隣で断水されたところもあったのでアクアを無料開放した。入浴券も2枚配布した。水も1世帯2.5リットル用意した。義援金活動もしっかりやっている。団地のスローガンは『千年優都』ですから」

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 通常は、取材の窓口である各社の広報を通して取材しているが、今回は全て電話で聞いた。広報を通していないため全て匿名とした。聞いたのはほとんどが現場の販売責任者だが、一部営業スタッフも含まれている。匿名ではあるが、記者は率直な現場の声を伝えられたと思っている。

 逆風を受けている湾岸マンションはもっと聞きたかったが、「責任者がいない」「広報を通して」と断られたケースが多かった。このようなときだからこそ、しっかりユーザーにも伝えるべきだとは思うが、微妙な問題だけに致し方がないのか。

 「これからは耐震性、太陽光、エコ、省エネなどがキーワードになる」という貴重な声も聞けたし、「千年優都」をスローガンに掲げる会社の取組の一端も聞くことができた。「事業離れ」を考えているデベロッパーには信じられない取組だろうが、これからはこのような企業がユーザーの信頼を勝ち得るのだろう。

(牧田 司 記者 2011年4月14日)