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この巨大地震でも口をつぐむ人とマスコミ報道


ブロック塀の左が沈み、右が浮いているのが見えるが、住宅そのものも大きく傾いているのが分かる(千葉市美浜区で)



  巨大地震が起きてから今日(3月22日)まで、記者は甲州街道の帰宅困窮者、千葉・新浦安、千葉市美浜区などの被災者などを中心に100人ぐらいには声を掛けた。名刺を出して取材目的を告げたのは少数だ。それでもほとんどの人が快く答えてくれた。訪ねもしないのに「娘はトイレを利用するのに駅まで行く」「この10日間、風呂に入っていない」「家が傾いていて寝られない」などと語ってくれたし、小雨が降るのに傘もささず被災現場まで案内しようと申し出てくれた人もあった。

 人は、嬉しいこととか驚いたこと、恐怖に感じたこと、悲しいことを他の人に話したがるものだということを改めて感じた。その意味では、取材はもの凄くはかどった。感謝するほかない。

 しかし、中には明らかに迷惑そうに取材、話すことを拒否した人がいた。弊社と同じビルに入居するある会社員がその一人だ。この会社員は、「セキュリティの関係で、社員外の人と話すのはまずいんです」と話した。ある小学校の管理職と思える人もその一人だった。「何の目的ですか」としげしげと記者の名刺を眺め、そっけない対応しかしてくれなかった。早く敷地外に出ろという雰囲気だった。この管理職と思える先生は、隣の街区で大きな被害を受けていることを知らなかった。

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 記者は、この二人の対応にわが国の将来を見るように思った。確かに、各企業は機密情報の漏洩に神経を尖らせている。「よその人間と話すな」というのも分からないではない。機密漏えいは企業の死活問題だろう。また、子どもが信じられないような犯罪にあっている現状を考えると、学校の先生が部外者を警戒するのも当然だろう。「知らない人と話すな」というのも納得できないわけではない。

 しかし、このような会社員がお父さんとなり、このような学校の先生の教育を受けた子どもが大人になったらどのような人間になるのだろう。信じられるのは、ネットの情報であり、一方的に流されるテレビなどの情報なのだろうか。

 マスコミで言えば、新浦安でも千葉市美浜区でも、「マスコミはどこも報じてくれない」という声をたくさん聞いた。新浦安の液状化をマスコミが報じたのはここ2〜3日だし、千葉市美浜区の惨状は、今のところ大新聞もテレビも報じていない。住宅が受けたダメージは、新浦安よりむしろ千葉市美浜区のほうが絶対量としては間違いなく多いと記者は思うが…。救いなのは、地震後の駅やコンビニでの新聞の売れ行きがいいように思うことだ。

(牧田 司 記者 2011年3月23日)