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東京都初の大規模太陽熱パネルを採用した

大和ハウス他「ザ・レジデンス千歳船橋」竣工


「ザ・レジデンス千歳船橋」


  大和ハウス工業は3月10日、東京都初の大規模太陽熱パネルを採用した環境配慮型マンション「ザ・レジデンス千歳船橋」が竣工したのに伴い報道陣向けに見学会を行った。

 物件は、小田急線千歳船橋駅から徒歩9分の世田谷区船橋2丁目に位置する10階建て「グランエアレジデンス」棟185戸と9階建て「ノーブルエアレジデンス」棟97戸からなる全282戸の規模。専有面積は約66〜100u、価格は5,300万円台〜8,500万円台、坪単価は265万円。建物は先月2月に竣工済み。施工は長谷工コーポレーション。事業主は同社のほか三井不動産レジデンシャル、長谷工コーポレーション。敷地はNTTの社宅跡地。現在、約半分が契約済み。

 東京都が掲げる「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」に呼応したプロジェクトで、@東京都初の大規模太陽熱パネルを設置した分譲マンションA電力・ガスの一括購入により光熱費を削減B省エネ性、断熱性に優れたマンションC周辺環境に配慮した緑化計画−が特徴。太陽熱パネルは658uで、同社が2007年に分譲した「D' グラフォート レイクタウン」( 500 戸)に設置した950uに次ぐ国内2番目の規模となる。緑地帯は約3,200uで、敷地に対する「みどり率」は約27%確保した。住棟セントラル給湯・暖房システム」を採用しているのも特徴の一つ。

 周辺は戸建てエリアで、将来にわたって太陽エネルギーが安定的に取得できることや、大規模で東京都の補助金が受けられること、「D' グラフォート レイクタウン」の実績データが参考にできることなどの条件が揃っていたために実現した。システムの設置に要した費用は約2億円。

 「住棟セントラル給湯・暖房システム」は、太陽熱パネルで暖めた熱媒体(不凍液)を地下の集中熱源プラント内にある熱交換器で温水と暖房用熱媒体に熱交換し、全住戸に給湯用の温水と床暖房の熱媒体を供給する。給湯用の湯は、大型の貯湯タンク(戸当たり150リットル想定)に貯められ、ガス補助ボイラーで約60℃に加熱されて供給される。各住戸が消費する電力と、太陽熱を利用できない場合に使用する補助燃料のガスを一括購入することにより、光熱費の削減も図っている。

 同社の試算によると、約75uの3人家族の場合、都市ガス利用のマンションと比べ年間で約6万円のコストが削減できるという。マンション全体では1990年比で約10.9%のCO2排出量が削減できるという。

    
屋上の太陽熱パネル                  地下の設備

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 現地では2時間近くにわたって担当者から詳しい説明を聞いた。「太陽光発電」と「太陽熱利用」の違いとメリット・デメリットや、太陽熱パネルは「真空方式」と「平板式」があることなどだが、記者の勉強不足でこのシステムのことがよく分からなかった。

 とくに都市ガス利用のマンションとの年間ランニングコスト比較は、どうしてそうなるのかと頭を抱えてしまった。

 このシステムを採用すると、照明・家電が79,875円(都市ガス利用の場合90,973円)、給湯が66,400円(同99,900円)、暖房が16,503円(同16,990円)、調理コストが11,628円(同17,424円)、水道コストが9,600円(同19,200円)となっている。

 電力もガスも一括購入する(かなり格安)ので全体として安くなるのは当然だし、給湯システムを採用すれば給湯コストが下がるのはよく分かる。しかし、「暖房システム」を採用しているのにどうして「暖房コスト」がガス利用と同じなのか。一番理解できないのが「水道」コストだ。このシステムを採用すると都市ガスより半分近くに減るのはなぜだろう。

 「暖房コスト」が下がらないのは、データのもととなっている「D'グラフォート レイクタウン」の「床暖房を使わず、エアコンをつけている入居者の方が多い」という関係者の話からも納得できるし、そもそも「床暖房」はリビングだけにしか設置していないのもその理由の一つだろう。キッチンや各居室にも「床暖房」を設置すれば、また違ったデータになるのではないか。

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 最先端のシステムを採用し外構も素晴らしいのに、竣工して契約済みが約半数というのは意外だ。大型物件にしては共用施設が少なく、単価の割には設備仕様がやや劣るのが影響していると記者は見た。同社東京支店マンション事業部マンション第1営業所・堀達雄氏は「完成すればお客さまの評価は高まるはず。売り急がないできちっと価値を伝えていく」と語っている。


雨水を利用した流れる池付きの庭

(牧田 司 記者 2011年3月10日)