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芦屋市のマンション建設不認可に異議あり

 報道によると、三井不動産レジデンシャルが芦屋市大原町で計画している第一種中高層住宅専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)の5階建て(高さ15メートル)23戸のマンションについて、同市は景観法で定める「景観地区」にふさわしくないとして建設を認めないことにしたという。「景観地区」制度により建設が不認定になるのは全国初だという。

 建設の可否を審査する有識者による「芦屋市景観認定審査会」(会長:荏原明則関西学院大学教授)が「(一戸建てが多く、閑静な住宅街が広がる)周囲の景観から逸脱しており、調和した建設スケールではない」(産経新聞)と答申したためだ。

 記者は、芦屋市には一度、野村不動産のマンションのモデルルームを見学するため行ったことがある。確かにいい街だと思った。しかし、今回の三井不動産レジデンシャルが建設する予定地は知らないし、報道だけの情報で軽々しく言うべきではないかもしれないが、建築不認定には驚いた。建基法や都市計画法に適合しているのに建設できないというのは大きな波紋を呼びそうだ。

 「景観法」は、明和地所の国立マンションをきっかけに制定の声が強まり、16年に施行されて以来全国に広まっている。その一方で、建築物の絶対的高さの規制やダウンゾーニングを実施するところも増えている。

 京都や鎌倉などの歴史的に保存すべき街並みを「景観地区」に指定することは賛成だ。しかし、建築物の絶対高さを規制すれば良好な街並みが保存できるというのはいかにも短絡的で、合理性を欠く。成城のランドマークマンションとして知られる住友商事「成城ハイム」(12階建て199戸、1981年完成)は1種住専(当時)に位置していた。「特定街区」認定を受けたため建設できたのだが、街並みともよく調和している。

 芦屋の街は知らないが、成城や田園調布、その他の高級住宅街の建物自体は個性的なものが多い。デザインも統一されているわけではない。全体として調和≠ェ保たれているのは、敷地が広く、周囲の緑などが緩衝帯になっているからだ。デザイン、外構が同じで統一性が保たれている意味では、最近のパワービルダーの建売住宅がもっとも優れているということになりそうだ。長屋住宅のように連なっており、屋根も外壁も2パターンぐらいしかなく、外構もシンプルだ。

 そもそも、建築物に絶対的な美などない。美しい景観とは時代とともに変わってくるものだ。それが文化だ。権威・信仰の象徴として建設され、世界遺産にも登録されている京都・東寺の五重塔は高さ 54.8メートルだ。首都・東京のシンボルとして建設された東京タワーは周囲の街並みと調和しているのか。本当に美しいのか。絶対的に美しいと答えられる人はいないだろう。

 芦屋市にもいいたい。「認定審査会」はどうして非公開なのか。市は非公開の理由として「会議を公開することにより、当該会議の公正又は円滑な運営に支障が生じると認められるため」としている。

 審査会は、個別の案件について審査するのだから、非公開とするのは分からないわけではない。しかし、景観法は公の利益を優先して私権を大幅に制限する法律だ。市民・関係者は私権の行使が公にさらけ出されることを覚悟しなければならない。

 多くの学生などに話をするのが仕事の大学教授などにとって公開は望むところではないのか。会長を含むわずか5人の委員の密室での会議で建設の可否が決定されるというのは公正を欠き、非民主的だ。

 過去2回の議事録もA4版2ページしかない。極めて不親切だ。市は、今回の措置について、建基法や都市計画法との整合性も含めて合理的な説明をしなければならない。一部高台に住む特権階級の人々の眺望権を認めることは、その他の人々の眺望権を奪うものではないのか。国は絶対的な眺望権を認めていない。

 もうひとつ言いたい。どうして行政は1層を3メートルと想定した規制や15メートル、20メートル、30メートルなどといった区切りの規制を行うのか。1層を30センチ高くするだけで素晴らしいマンションが建つと記者は考えている。

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 今回の措置について芦屋市の都市計画課に聞いた。同課によると、「不認可の理由は、 15メートルという絶対的な高さがダメということではなくて、ボリューム観が問題となった。分棟にすればいいという声もあった。 規制の趣旨は海の眺望も六甲の眺望も確保するということ。

 当該エリアでは、もともと戸建てが計画されていた。地区計画も2年前から計画されており、今年度末には住民案がまとまるはずだ。建基法や都市計画法との整合性については、『景観地区』の指定で規制をかけてもいいというのが法の趣旨だ。ガイドラインについては、もう少し分かりやすいよう補強する」ことだった。

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 海の眺望も山の眺望も確保せよとは、芦屋市は凄い市だ。このことが市民のコンセンサスを得ているのであれば、第三者が立ち入ることではないのかもしれない。いっそ中高層建築物を取り壊し、平屋建てにでもすればいい。

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(牧田 司 記者 2010年2月15日)