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「子どもは社会を映す鏡」実感

 旭化成ホームズ「くらしノベーションフォーラム」


野井氏


埼玉大学教育学部准教授・野井真吾氏が講演

「今時の子ども 〜からだ・心・生活を知る〜」

 旭化成ホームズ「くらしノベーション研究所」は12月13日、埼玉大学教育学部准教授・野井真吾氏を講師に招き、第3回 「くらしノベーションフォーラム」を開いた。

 同フォーラムは、現代社会が抱える様々な課題に精通している専門家の講演を中心にメディア向けに行っているもので、今回は、子どもの「からだ」にこだわった研究を進めている第一人者である野井氏が「今時の子ども 〜からだ・心・生活を知る〜」をテーマに約70分、熱弁を振るった。

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 野井氏の講演は耳の痛い話ばかりだった。起床時に体温が上がらないばかりか、終日体温が上がらない状態が続くこと、慢性的な睡眠不足状態が続いていること、落ち着きのない子どもが増えていることなどが報告された。また、野井氏が中心となってまとめた「子どものからだと心 白書 2010」(発行:子どものからだと心・連絡会議、A4判176ページ)も頂いたが、ありとあらゆるデータは、子どものからだと心が病んでいる深刻な状況であることを知らせていた。

 野井氏も語ったように、子どものからだと心が病んでいるのは「社会全体が病に冒されている」からだし、「子どもは社会を映す鏡」だ。だからといって、教育や家庭、さらには社会に責任を転嫁すれば済む問題でもない。

 野井氏が最後に「『早寝・早起き・朝ごはん』は、健康生活のバロメータであって、取り組みのスローガンとしては必ずしも適切ではない。『光・暗闇・外遊び』など、少しだけ頑張ればできそうなことから始めよう。ワクワク、ドキドキしながら、夢中になれるような取り組みを仕掛けよう」と呼びかけたのには、少し救われた気がしたが、子育てに完全に失敗した記者にとっては「後の祭り」だ。


野井氏

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 今回のテーマと関係ないが、先週の土曜日、 NHK テレビで「中国 こども民主主義」という再放送ドキュメンタリー番組を観た。ある小学校 3 年生の級長を選挙で選ぶ過程を放送したもので、選挙演説から根回し、賄賂、親の介入などそれこそなんでもありだった。対立候補を馬鹿呼ばわりし、「デブ」「独裁者」などと罵り合うシーンもあった。アメリカ大統領選挙やわが国の選挙戦とほとんど同じだった。結局、選挙では賄賂を使った「悪がき」が圧勝した。敗れた生徒は号泣していた。

 中国でこのような教育が行われていることを知り、愕然となった。わが国でこんな級長選びをしたらそれこそ袋叩きにあうだろう。改めて中国には全ての面で勝てないと思った。今読んでいる陳舜臣の小説「阿片戦争」は上巻を読み終えたばかりだ。上巻では当時の「賄賂社会」が浮き彫りにされている。全部読み終えれば、「中国」を少しは理解することになるのだろうか。


講演会場(経団連会館)

(牧田 司 記者 2010年12月14日)