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雌伏6年 住友林業鉄より強い木造

「BF構法」が爆発的ヒット


武蔵小杉住宅展示場の住宅

 

 雌伏6年―「鉄に負けない木造をつくろう。鉄と真っ向勝負しよう」という狙いでスタートした住友林業のビッグフレーム(BF)構法」が爆発的にヒットしている―住友林業が平成 17 年に発売した耐震性や耐久性、断熱性、快適性などに優れたスケルトン・インフィルの木造「ビッグフレーム(BF)構法」を採用した住宅がここにきて大幅な伸びを見せ、昨年同期は163棟の受注だったのが今年度はすでに692棟と424%の伸びを見せており、年間1,000棟達成がほぼ確実となっている。

 驚異的な伸びについて、同社常務執行役員住宅事業本部副本部長営業推進部長・和田賢氏は、「3年前、1,400人の全営業マンに年間1棟でいいから売れといってきたが売れなかった。売れるようになったのは技術陣も含めスタッフがどうすればコストダウンできるか、お客さまにアピールできるか分かってきたため。鉄に負けない絶対的な自信はあった。われわれには木造以外の選択肢はない」と語った。


和田常務

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 同社は12月10日、「BF構法」を採用した住宅の現場見学会と、9月にオープンした同構法を採用した武蔵小杉展示場の住宅見学会を行った。

 「BF構法」は、躯体を特殊な金物や通常柱の5本分に相当する幅560ミリのビッグコラムを採用することで、「耐震等級3」を確保しながら開放的な無柱空間を実現した。ビッグコラムは、一般的な耐力壁の3分の1の幅で同等の強さを確保できるため、1階部分より2階部分を大きく張り出すキャンティレバーをつくることが可能となり、開放的なコーナーハイサッシ、ビルトインガレージなどを実現した。

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 最初に見学した住宅は建坪17坪で、内部は構造壁が一つもなかった。基礎部分が通常の戸建てより2〜3倍は強度がありそうなのも実感できた。2番目に見学した住宅展示場の住宅は、コンクリート住宅や鉄筋造とほとんど遜色なかった。鹿島建設が同社の独自壁式ラーメン構造を採用した柱や梁型が全然居室内に現れない「加賀レジデンス」を3年前に見学して驚いたのと同じ衝撃を受けた。「これはRCとどこが違うのか」と。

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 見学会と見学会の後に行われた懇親会での和田氏の話を聞きながら、「なるほど」と何度も納得した。

 和田氏は、「単価は鉄鋼系より高く、開発当初は苦労すると思った。百も承知していた。一昨年に2階建て、さらに昨年は平屋も投入して進化させてきた。ストライクソーンに入ってきた」

 そこで和田氏が考えたのは広島での受注強化だった。和田氏は平成10年から12年間の3年間、極めて厳しい市況化にあった広島で3年間勤務している。

 「当時は低価格競争が吹き荒れ、同業他社との競合も激しかった。この広島で売れれば全国で売れると思っていたが、その通りになった。広島はモデルハウスもないが独自の手づくりショールームを造って展開している。今では受注20棟のうち15棟はBFだ。今年度は年度末を待たずに1,000棟を達成できるし、来年度は1,500棟を目標にする」と語った。

 「広島の責任者は2カ月前に熊本に転勤になったが、すでに熊本でも受注15棟のうち13棟がBFだ。誰か旗振りが必要ということですよ」と言う言葉には力がこもっていた。

 「鉄は熱いうちに叩け」という言葉があるが、木は年とともに進化し、年とともにいい味が出るということか。それにしても、展示場の3階建ては見た目には鉄鋼系とほとんど変わらなかった。準防火にするには不燃材で構造材をくるまなければならない建基法の規制があるためだそうだが、建基法は抜本的な改正が必要だ。

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 記者は、和田氏が広島に勤務していた平成12年、野村不動産の「A.CITYアベニュー花の季台」(全900戸)の戸建て団地を見学している。最悪の市場下で同団地は4年間で完売した。売れているのはこの団地だけだった。確か市内の建築確認の半数が野村不動産の団地だった。

 和田氏は「そうそう。野村不動産さんは東京ではライバルだったが、広島では手を組んで、あの団地をどうしたら売れるかを考えた」と語った。


ビッグコラムと土台の接合部分

(牧田 司 記者 2010年12月13日)