RBA HOME> RBAタイムズHOME >2010年 >

港区の行政資料が示す驚きデータ 窃盗が激減

 先ほどはリーマン・ショックの影響が港区の高額納税者を直撃していることを区の行政資料が物語っていると書いたが、行政資料はおおよそ半年から1年前のデータしか載らない。遅行データではあるが、時代を映す鏡だ。読んでいると、びっくりすることにも出くわす。港区の行政資料から面白いデータをいくつか紹介しよう。

 港区は外国人登録者の数がもっとも多い区のひとつで、平成22年10月現在、21,945人(19年3月末比0.1%増)が登録している。住民の約1割だ。国別でもっとも多いのはアメリカ人で4,625人(同6.5%減)。4位のイギリス人は1,405人(同13.0%減)、6位のフランス人は896人(同16.5%減)、7位のドイツ人は493人(同2.5%増)とドイツを除き欧米人は軒並み減少している。

 興味深いのはやはり元気な中国人だ。中国人はアメリカ、韓国及び朝鮮に次ぐ3位の3,268人(同18.03%増)となっており、ここ6年間毎年増加している。2位の韓国及び朝鮮は3,775人(同6.2%増)だ。フィリピンが5位なのはよく分からないが、1,026人(同4.4%増)だ。

 これもリーマン・ショックの影響だろう。もうひとつ、リーマン・ショックの影響がはっきり現れているデータを紹介しよう。中小企業への融資状況だ。区が斡旋、または融資したのは平成21年度で7,988件約892億円だが、平成19年と比較すると件数で2.2倍、金額で2.9倍に激増している。

 住宅地や商業地の下落も顕著だ。21年の基準地地価の区内住宅地でもっとも高いのは175万円(1u当たり)で、平成19年比14.6%下落している。商業地も同様に940万円(同)で19年比20.4%の下落だ。

 面白いのはタバコ税収入で、平成16年度には約56億円あったものが年々減少し、平成21年度では47億円で、実に17.6%も減少している。今年10月の値上げによってさらに激減するのは間違いない。

 悪いデータばかりではない。港区では刑法犯が激減しているのだ。殺人から強かん、暴行、窃盗まで全ての刑法犯は平成16年度に10,061件(港区を管轄する警察署の総数で、品川区、大田区、江東区の一部も含まれる)あったのが、平成20年度は6,560件へと何と34.8%も減少している。

 内訳を見ると殺人とか強かんなどは毎年4〜11件あり変わらないが、激減しているのは侵入窃盗だ。平成16年に810件あったものが20年には265件へと67.3%も減少している。

 どうしてこれほど減少したのか区の担当者に聞いた。担当者によれば、港区は平成15年に条例を設け、犯罪の防止に力を入れているのが効果を発揮しているとのことだった。18年度からは行動計画を作成し、区独自の青いパトロールランプを設けた車を巡回させ、防犯灯、防犯カメラなどの設置に対して助成金も交付しているという。さらに、外国人による犯罪が増加傾向にあったので、警察署も防止に力を入れているのも大きいと担当者は語った。

 港区の犯罪が他区と比べて多いのか少ないのか分からないが、この5年間で窃盗が4割近くも減ったのは驚きただった。マンションデベロッパーの果たしている役割も少なくないはずだ。

◇     ◆    ◇

 後で調べたら、新入窃盗が激減しているのは港区ばかりでなく東京都全体(警視庁)にもいえることだ。警視庁のデータによると平成17年度の侵入窃盗件数は19,278件で、平成21年度は10,770件へ実に44%も減少している。刑法犯全体でも17年度の約254,000件から21年度は約206,000件へと19.0%減少している。

 侵入窃盗を除いた刑法犯の減少率は12.8%だから、侵入窃盗の減少が全体の犯罪減に大きく寄与していることが分かる。この点について警視庁に問い合わせてみたが、「電話での取材は受けない。明快な答えは出ない。一般論として様々な防犯対策の相乗効果ではないか」ということだった。

 マンションのセキュリティ対策には各デベロッパーが力を入れており、オートロックは常識になった。犯罪抑止に貢献したと表彰状の一つぐらいもらっていいのではないか。 

(牧田 司 記者 2010年12月3日)