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創建「10年後又は15年後無料リフォーム」実施

もう一つの狙いは行政・業界への警鐘


吉村社長

 

 関西圏では「社長直通110番」でよく知られている創建が11月30日、記者発表会&懇親会を開き、来年1月から同社が施工・分譲した戸建ての「10年後又は15年後の無料リフォーム」を実施すると発表した。

 同社は、「生涯メンテナンス」を掲げ、「社長直通110番」「竣工引渡図書の進呈」「無料1カ月点検の実施」「夏祭り、冬の餅つき」などを実施してきたが、これまで唯一できなかった「10年後又は15年後の無料リフォーム」を実施するという。

 対象となるのは、LDのフローリングの張り替え、LDKの天井・壁のクロスの張り替え、及び2間続きの洋室の天井・壁のクロス・フローリングの張り替え、間仕切壁の設置もしくは撤去。分譲開始後10年目を迎える関西の「ワールドフォレスト ルナ・りんくう」(大阪市泉南市、全308戸)からスタートする。平成30年までの間に721戸が想定されている。

 有料リフォームにも対応するた今年6月、11名からなる専任のリフォーム部を設置した。

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 最初、この「10年後又は15年後の無料リフォーム」を実施すると発表した同社・吉村孝文社長の言葉に記者は仰天した。すぐソロバンを弾いた。記者は6畳の和室を洋室にリフォームしたことがあるが、費用は約50万円だった。LDKやその他のフローリングやクロスの張り替えを行えば百数十万円(原価は分からないが)はかかる。向こう8年間に721戸も実施すれば年間1億ぐらいのコストがかかるのではないかと思った。

 吉村社長が実施すると決断した時、社員も銀行もみんな反対したそうだ。銀行からは「負の遺産をわざわざどうしてつくるのか」と怒られたそうだ。

 しかし、サラリーマンとして設計の仕事に携わり、それから会社を興したという吉村社長の話を聞くうちに吉村社長には絶対的な自信があるのだろうと思えてきた。

 ヒントは「社長直通110番」だ。これは、10数年前から始めたもので、社長自らがクレームを受け付けるというものだ。始めたきっかけは「私の姪が家を建てまして、直して欲しいところがあって会社に連絡し、工事予定日の朝から待っていたところ、夕方の5時ごろに電話がかかってきて『今日はうかがえません』と伝えられました。私の身内ですらこのような対応なのだから、これはひどいと思い決めたことです」とのことだった。

 効果はてき面だったようだ。「社員や職人のモチベーションが上がりましたね。わたし自身も年間10本ぐらい受けますが、クレームに発展することはほとんどありません」とのことだ。

 つまり、先の「りんくう」でも購入者の3分の1が紹介によるものだったというように、「クレーム・苦情」に適切・迅速に対応すれば、さらに新たなビジネスが発生するものだ。このことを明快に喝破したベッツィ・サンダースの「サービスが伝説になる時」を文末に掲げておく。

 展開次第では無料リフォームがコストの数倍のビジネスに発展する可能性も秘めているのではないか。無料リフォームにかかる経費については「皆さんが考えていらっしゃるほどかからないが、企業秘密ですのでコストについてはご勘弁を」と語った。発生する費用については、無税の対象とはならないそうだが、ちんと積み立てているという。

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 吉村社長の話を聞くうちに、この仰天の「無料リフォーム」の新の狙いは別のところにあるのではないかと思った。深読みかもしれないが、それは現在の建売住宅市場への警鐘ではないかと。

 吉村社長は「関東でも関西でも、価格の安さを売りにした戸建てが大量に供給されている」「安くていいものができるはずがないというのが私の考え」「この先、わが国にもサブプライムが発生するのではないか」「銀行は、建物の診断をきちんと行い、100点満点の物件にだけ100%融資すべき」「一般の建売住宅のフローリングは糊付けされているが、当社はくぎ付けしている」「当社は壁と床は連動しないよう施工している」「国交省が進めている住宅行政は魂が入っていない」などと語った。

 記者も同じような考えを持っている。これまでは大手・中堅の別なく建売住宅の現場取材も結構やってきた。しかし、数年前から一部を除き見学を止めた。記者のイメージする建売住宅とはかけ離れているからだ。見ると失望し、怒りも覚えるから止めたのだ。劣悪な団地がどのようになるかは、しっかり見てきている。

 記者は諸悪の根源は10年前の「品確法」にあると思えてならない。たいした品質性能もないのに優良≠ナあるようなお墨付きを与えたのが建売住宅市場を一変させた。「安いもの」がいい商品になったのではないか。

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ベッツィ・サンダースの「サービスが伝説になるとき」

 「不満を持つ顧客のうち苦情を言うのは4%に過ぎない。96%は怒って2度と来ない。苦情がひとつあれば、同様の不満を持つ人は平均26人いる。苦情を言った人の56〜70%は苦情が解決すればその企業と再び取引したいと考える。解決が迅速な場合、96%に跳ね上がる。そしてそのことを5〜6人に話す」

(牧田 司 記者 2010年11月30日)