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感動的なマンションを見た

野村不動産・三井不動産RD「中野ツインマークタワー」


「中野ツインマークタワー」完成予想図

 

 ついさっき(11月26日夕)、感動もののマンションを見学した。野村不動産(事業比率60%)と三井不動産レジデンシャル(同40%)が明日(11月27日)から1期130戸の登録受付を開始すると発表した「中野ツインマークタワー」だ。ニュースリリースを引き写すだけなら1時間も掛からないが、この物件の魅力を伝えるには少なくとも原稿を書くのに1時間半、ホームページに記事を掲載する作業に30分はかかる。しかし、19時過ぎには出かけなければならないので全ては書ききれない。日を改めて書くので是非続きも読んでいただきたい。ここではごくさわりだけにとどめる。

 物件は、総武中央線、東京メトロ東西線中野駅から徒歩2分、中野区中野3丁目の丸井跡地に建つ29階建て全234戸の規模。専有面積は38.83〜120.07u、1期の価格は3,580万〜17,980万円(最多価格帯7,900万円台)、坪単価365万円。入居予定は2012年9月下旬。施工は前田建設工業。

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 物件の特性はニュースリリースを読んでいただきたい。何が感動ものかだが、まず販売事務所の設営から書く。事務所は3階建てだ。この規模の物件を販売するにはやや広いぐらいだろうか。物件説明をしていただいたのは同社住宅カンパニー住宅販売部住宅販売課担当課長・泉山秀明氏だ。入社15年目で、「厳しい市場もさることながら、お客さまの見る目が厳しい」大阪・神戸などで11年間、マンションの商品企画から販売まで全て行ってきたそうだ。

 泉山氏は、「販売事務所は棟内モデルと一緒のものを造った」と説明したように、売り≠フ一つでもある「ライブラリー」や床や壁なども完成後のものを再現している。

 ここまでは、どこのマンションでもよくあることだ。驚いたのは風除室が設けられていることだった。記者はマンションそのものに設置するのだろうと思ったが、販売事務所にも設けたのだという。暖房が効かない受付業務の辛さはやったものしか分からない。記者は、マンションのモデルルームではないが、特設会場の売り子の辛さは聞いて知っている。

 泉山氏は「受付の人も気持ちよく働いていただきたい」ということから設置したのだという。さらに、受付カウンターの裏側も見せてもらった。ものが入れやすいよう可動式の棚が設置されていた。カウンター裏のドアも両手にものを持ちながら出入りできるようにしたという。

 顧客対応の営業マンは12人態勢。2カ月ちょっとの完全予約での対応で来場者は約 1,100組。1日4回クールでも足りなくて、5回にもなることがあるという。それこそてんてこ舞いの忙しさだが、受付の女性にもこのような心配りをしているのが嬉しいではないか。

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 単価のことについて書く。記者は見学する前、いつも通り単価を予測した。数年前なら坪400万円もあったかもしれないが、今の市場を考えれば370万〜380万円くらいだろうと読んだ。まあまあ的中したのだが、同社は単価では計れない価値を物件に盛り込んでいる。簡単に言えば「60平方bでも 90平方bと同等の暮らしができる」「駅から10分の同レベルの居住空間が、駅から2分のこの物件で得られる」ということを具現化していることだ。

 「ライブラリー」もその一つだ。8つのライブラリーを備え、「青山ブックセンター」と提携して毎月30冊の新刊本が備えられるという。1戸当たり月額400円という。

 このような試みは業界初だと思うが、泉山氏はニューヨークにはライブラリーホテルがあることを知り、「青山ブックセンター」から勧誘があって導入を決めたという。たまたま偶然が重なり合って実現したものだ。

 設置コストもほとんど掛けていないという。ロビーやその他空いているスペースに棚を設けるだけだという。さらに、リサイクルライブラリーを設けることによって、不要になった書籍をそこに置き、入居者が自由に持ち出すこともできるようにしている。「これって、エコですよね。ブックコンシェルジュもいいかもしれませんが、そこまでコストをかける必要がないと考え、ブックコンサルタントにしました」

 記者も反省していることだが、マンションの価値をわれわれは「坪単価」で計る。これはこれで一つの尺度になるのだが、共用部分が充実しているマンションは、また別の尺度が必要だと痛感している。それは単なる有効率(レンタブル比率)でもないような気がする。

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 「60平方bでも90平方bと同等の価値」を具現化したものの一つに、「ライフガレージスペース」がある。玄関に設けた一畳余りのスペースだが、自分の好みにより何にでも応用できるようにしている。モデルルームでは自転車好きを対象にしたスペースにしており、壁に車輪や様々なグッズを掛けられるようにしていた。ファンなら誰もが知っているツール・ド・フランスのデッドヒートの写真も飾ってある。

 これを見た来場者はにやりとして「やるね」と語ったそうだ。泉山氏も自転車のことについては何も知らないようだが、顧客感動とはこのことだ。お客さんは、自分の買うマンションにそこまで心を配ってくれるのかということに感動するのだ。

 もちろん、この「ライフガレージスペース」はリビングドアを閉じれば自分の空間にもなるし、ドアを開け放てば、何か作業をしながら家族との語らいの場ともなる。「内廊下のタワーマンションだからできた。これが、外廊下のすぐだと具合が悪い」(泉山氏)

 もうそろそろ時間だ。続きはまた日を改めて書く。

(以下、11月27日追加)

 クローゼットの2段ハンガーは、記者が初めて見たものだった。固定棚を可動棚にしただけのものだが、大阪では採用したというものだった。クローゼットの把手もそんなに高価なものではなかったが、ハンガーが掛けられるようにコの字型にして、さらに手垢が目立たないようなキズをわずかにつけたものを採用していた。

 泉山氏はこう語る。「関西、とくに神戸の方は古いものを好まれるのです。だからわざと欠けたレンガなども採用したことがあります。20年後はいくらかかるのかとも聞かれます(管理・修繕費を含めた資産価値のことだろう)。

 今回の商品企画でも、20年後のことを考えてライブラリーの設置も決めました。いい例えが富士山です。富士山が一番高いのは誰でも知っていることです。しかし、2番目に高い山はどこかと聞かれて答えられる人はほとんどいません。北岳だそうですが、私も知りませんでした。これだなと思いました。つまり、『中野で一番のマンション』を造ろうと」(蓮舫議員に聞かせたい話だ)

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 水周りも異動が可能なオーダーメイドでSIを採用しているのも大きな特徴に一つだ。標準階でも天井高は2600〜2800ミリ、最上階は3200ミリだ。二重床・二重天井で床のふところ厚は250ミリ、スラブ厚は300ミリだから、階高は3300ミリあるのではないか。泉山氏はオーダーメイドについてこう語った。「オーダーメイドは標準仕様を抑えてオーダーで価格を引き上げるのではと考えていらっしゃる方もいますが、逆なんです。設備仕様をできるだけ引き上げて、無駄を省こうという発想が基本です」と。

 モデルルームの70cタイプの専有面積は68.97平方bだ。家族数にもよるし、オーダーメイドだから自由なプランにもできるが、3人家族ならやや狭いかもしれない。

 ところが、モデルルームでは廊下スペースを 1畳大に抑え、その代わりに玄関サイドに多目的に利用できる「ライフガレージスペース」を設け、玄関と、廊下に設置した本棚を設置することで、全体で3畳大はありそうな空間を創出している。台所も3.4畳大確保しているし、LDは12.2畳大ある。

 泉山氏は、このプランを説明するのに「徹底して無駄を省いた究極のプラン。ベッドや家具がぴったり納まるように居室の縦横比率を研究して3m×6mが一番効率的で、7.8メートルスパンが完璧であることを研究して編み出した」と胸を張った。先に書いた「60uでも90uの居住性を確保した」というのがこのプランだ。

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 なるほどと思ったことがもう一つある。商談は完全にマンツーマンで行っているから、圧倒的な来場者を集めた「池袋本町」や、この「中野」の1.5倍の来場者がある「赤羽」よりは来場者の数は少ないが、その代わりコンセプトなどを徹底して説明できるメリットも生まれる。泉山氏が考えたのは、プランニングから決定に至るまでの経緯をお客さんにしっかりと伝えることだった。それを口頭ではなく、ラフスケッチから変更するごとに描いた図面をファイルにして、そのファイルを見せながら設計意図を伝えるのだという。

 プランを決定するまで数回にとどまらず数十回も変更を加えるという話はよく聞く。しかし、実際の変更過程をお客さんに示すというのは聞いたことがない。

 細かいことでは、オートロックキーは美和ロックの新製品が採用されていた。ポケットやカバンの中に入れていても、エントランスの1メートルぐらい手前で開くのだという。逆に、カードキーを持っていないと、1メートルぐらい手前で警鐘を鳴らすのだという。

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 最後に泉山氏が話したことを紹介しよう。「われわれは、○○さん(あるデベロッパー)と違い、なかなか思い切ったことができない。臆病なんですよ。石橋を叩いてしか渡れない。今回採用したことも、全て実際に住んでいらっしゃるお客さまの声を反映しているだけです。お客さまのお叱りにヒントがあると思っています。エレベータホールに鏡を設置するのもその一つです。エレベータはどうしても待ち時間が発生します。いらいらするときもあります。そんな時、自分の姿を確認することができる鏡は重宝します。お客さまに喜んでいただけるはずです」

 泉山氏から話を聞いたのは1時間もなかったはずだ。黙って聞いていれば、泉山氏は2時間でも3時間でも話したそうだった。記者は早くネットに記事を書くことを考えていたので気もそぞろだった。そんなわけで、聞いたことはほとんど書いたつりだが、聞き違いがあったかもしれないし、泉山氏の真意を伝えられていないかもしれない。

 しかし、2時間でも3時間でも物件の特徴を話しつづけられるほど魅力のある物件を記者はあまり経験したことがない。だいたいは10分くらい見れば、売れるか売れないか、レベルが高いか低いかが分かる。

 今年のマンションでは野村不動産「プラウドシティ池袋本町」が話題性、売れ行きから言ってナンバー1だろうが、優れた商品企画を加味した総合評価では今回の「中野ツインマークタワー」に記者は軍配を上げたい。


ライブラリー

(牧田 司 記者 2010年11月26・27日)