RBA HOME> RBAタイムズHOME >2010年 >

 万人向きの十全のマンションなど存在しない

 ある不動産情報サイトの掲示板を読んでいたら、記者が「極めてレベルが高い」とレポートしたマンションについて「RBAは提灯記事ばかりだから信用しない方がいい」と書かれていた。

 そもそも、記者が書くマンション記事は、業界関係者に参考にしていただくのが主な目的で、一般の消費者を意識して書いているわけではない。基本的には質的に優れた物件や人気になりそうな物件ばかりだし、劣悪と思われる物件を紹介したことはほとんどない。劣悪で売れないマンションの記事など書いても全然参考にならないからだ。

 記者が書いた記事を「提灯記事」と決め付けるのは読者の勝手だし、「信用」していただけなくても結構だ。むしろ「提灯記事ばかりを」読んで頂いてありがたくさえ思う。

 ただ、消費者の方々に少し言わせて頂く。マンション選定を誤まらないためだ。

 記者は30年も業界紙の記者をしている。業界寄りの記事を書くのは当たり前だ。しかし、だからといって、特定の企業や団体を利する記事を書いたことはない。書いたとすれば、それは全てよかれと書いたまでだ。

 一般の消費者向けの記事を書かないのは、正確に言えば書けないのだ。そもそも万人に勧められるマンションなど一つもない。年収も異なればライフスタイルも異なる。通勤便を重視するのか、環境を重視するのか、価格の安さを重視するのか、子どもの教育を重視するのかそれこそ千差万別だ。マンション選定は極めて個別性が高い。(記者がもっとも重視したのは子どもの教育=住環境だった)

 このように個別性の高い商品をいいマンション∞悪いマンション≠ネどと区別できるわけがない。3,000万円の物件しか買えない人に5,000万円のマンションを勧めたところでどうにもならないのと同じだ。

 一般消費者の方々は、しっかりと自らのライフスタイルを見据え、何を重視するかを見定めた上で物件を選んでいただきたい。あまり周囲の声など聞かないほうがいい。いろいろ周辺の意見を聞いていると、まずマンションなど買えなくなる。価格を重視するのであれば、多少の基本性能や交通便は犠牲すべきだろう。

 記者はかつてあるユーザーに取材したことがある。バブル前だ。その方は、あれやこれや20物件ぐらい見学し、結局、あれもこれも欠点が気になり購入しなかった。そのうちにバブルの発生だ。マンション単価は2倍、3倍に暴騰し、購入を断念せざるを得なくなった。これはもう悲劇だ。

 不動産情報サイトは実に様々な情報を伝達してくれるが、その情報に振り回されてはならない。掲示板にいろいろ批判的な投稿をされる方は、買いたいが、買えないから欠点をあげつらう≠アとで自らを納得させている方も多いのではないだろうか。万人に勧められるマンションなど一つもないのと同時に、十全のマンションも一つもないことを消費者の方々は理解してほしい。

 参考までに、冒頭の「提灯記事」とされたマンションは、予算が3,000万円の人には手が出ないだろうが、5,000〜6,000万円のレベルの高い物件を探している人にとってはお薦めだ。

(牧田 司 記者 2010年8月23日)