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 大手寡占進行し 片肺飛行続くマンション市場

 不動産経済研究所が昨日(8月16日)、首都圏マンションの7月の市場動向をまとめ発表した。供給量が前年同月比27.8%増の4,128戸で、6カ月連続して前年実績を上回り、契約率も前年同月比2.9ポイントアップの78.2%となり、好調に推移し、平均価格、単価も上昇しているというものだった。同社の発表を受けて業界紙もマスコミもマンション好調≠報じた。

 記者も異存はない。利益率はともかく、大手デベロッパーを中心とした販売好調は昨秋から続いていることだ。消費の低迷、雇用不安、株価の下落が続き、日本経済の先行き不安が払拭できない状況の中で明るい材料であるのは間違いない。

 しかし、同社の発表やマスコミの報道だけでは全体のマンション市場を正確に捉えているとは言い切れない。これまでマンション市場は大手と中小の各デベロッパーの住み分けが構築されており、中小の役割も大きな位置を占めていた。中小デベロッパーの物件は、基本性能や設備仕様面で劣るものも少なくはないが、それは価格に反映されて安くなり、中低所得層のニーズに応えてきた。

 ところがリーマンショック後は、この大手・中小の住み分けの構造が一挙に崩壊した。現在は大手寡占の市場と見てよく、中小デベロッパーは一向に元気を取り戻す気配がない。中小の市場占有率が高かった千葉県や埼玉県でのマンション着工は激減しており、他のエリアでも大手の供給比率が高まっている。極めていびつな構造といわざるを得ない。(新規マンション市場が縮小し、その一方で中古マンション市場が活性化されるのはそれはそれで結構だが…)

 記者にとっての一番の関心事は、このいわば片肺飛行状況はいつまで続くのかということだ。マンションを始めとする住宅分譲はわが国の経済再生の牽引車でもある。大手と中小の車の両輪がきちんと機能してはじめて経済再生のレールを敷くことができる。

 成り行きに任せていたら、それこそ中小は息の根を止められることになるのではないか。中小デベロッパーへの事業資金融資を促進する政府の支援を期待したい。

(牧田 司 記者 2010年8月18日)