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 「うわぁ、玉ネギ見るの初めて」

東急不動産「春野菜収穫体験イベント」


ダイコンを手に歓声を上げる参加者

 

 東急不動産が6月13日(日)行った、マンション購入者による「春野菜収穫体験イベント」を取材した。イベントは、顧客満足度の向上を目的に2005年からスタートした住宅契約者向けのサポートプログラム「くらし NAVI プログラム」の一環で、埼玉県児玉郡神川町の「神泉野菜農園」で、都会ではなかなか体験できない土いじり、草取り、収穫などを体験してもらうのが狙いだ。

 神川町は、埼玉県の北西部にあり、人口は約1万5,000人。町の北西側に流れる神流川で群馬県藤岡市と境界を接しており、上流には下久保ダムがある。2006年、旧神川町と旧神泉村が合併して同町となった。

 神川町神泉地区(旧神泉村)は、地域全体が県立上武自然公園に指定されており、名水「神泉水」と「冬桜」で名高い自然豊かな山里。都心部から車で約2時間半、電車だと新宿から高崎線本庄駅からバスに乗り換えて約3時間。

 当日午前10に現地に集まったのは8組31人。同社のマンションの売買契約を結んでから入居後1年未満の人たちた。ほとんどが都内に住む30歳代、40歳代の家族連れだ。

 農業グループの代表・石井さんなどが丹精込めて育ててきた玉ネギ、4種のジャガイモ、ダイコンを約2時間にわたって、説明を聞きながら収獲した。地元でしか消費されないというマヨネーズや味噌などで採れたてのジャガイモの試食会も行った。

 参加者は「うわぁ、玉ネギを見るの初めて」と歓声を上げながら、総重量10キロ以上はありそうな野菜を車に積み込んだ。

 畑の側の木々からは「ホー、ホーケキョ、ケキョ、ケキョ」とウグイスが遠来の客を歓迎していた。

◇     ◆     ◇

 何人かの家族連れに話を聞いた。「玉ネギが植わっているのを見るのは初めて」「子どもは学校で体験しているようですが…」「ジャガイモの花は理科で習いましたが…」と 30 歳代、 40 歳代の夫も主婦も異口同音に語った。 60 歳代と思われるお母さんは「私も田舎(地方出身)がありませんから、子どもたちが知らないのは当然だと思いますよ」と代弁した。

 玉ねぎやジャガイモが植わっているのを初めて見るというのは、田舎育ちの記者にとっては信じられないことだが、田舎出身者でない東京生まれの東京育ちの人にとってはさもありなんと納得するしかなかった。

 収穫を通じて、いかに農作業が大変かを理解していただきたいと思った。

◇     ◆     ◇

 石井さんにもいろいろ聞いた。顔は日焼けして真っ黒だったが、腰がしゃんと伸びており、とても長く農業に従事しているとは思えなかった。

 石井さんは役場の職員を退職後、休耕地がそのまま放置されているのを見かねて、仲間と共に野菜農園を始めた。「歳? 71かな、72になったっけ。農作業はもちろんしたことがありますが、本業は農家ではありません。われわれの年代の農業の人たちはほとんど腰が曲がっています」

 石井さんは、「消費者の野菜に対する要求が強くなっていますが、これでは経営が成り立たない。考えないといけない。機械があるから何とか作業ができますが、昔のような厳しい農作業はもう誰もできない」とも語った。

 耕作放棄をどうするのか、農業をどうするのか、農家と消費者の関係をどうするのかなど改めて考えさせられた1日だった。

    
左からジャガイモを掘る参加者、玉ネギの収穫、石井さん

(牧田 司 記者 2010年6月14日)