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売上げ倍々増 これはヒットする

サントリーミドリエ「パフカル」


サントリーミドリエのショールームで

 

 サントリーミドリエの緑化システムをマンションに初めて採用した東急不動産「ブランズ川口栄町パークフロント」については先に紹介した。「これはいい」と記者は直感した。絶対普及するだろうし、展開によっては爆発的にヒットするのではないかとも思った。そこで、サントリーミドリエの緑化システムについてもっと詳しく知るために港区南青山にあるショールームを訪ね、同社事業推進部部長・井上士郎氏 (45) に話を聞いた。


井上氏

 売上高が1兆5,507億円(平成21年12月期)もある大企業が、なぜこのような事業を始めたのかがもっとも聞きたかったことだ。

 井上氏の説明によると、 サントリーは、創業より自然の恵みで生かされてきた会社であり、「環境」にはことのほか敏感な会社だ。また、酒類、飲料の原料である植物の研究にも熱心に取組んできている。この資源を活用して、環境貢献するという強い意志をもって参入したという。

 土を全く使わず、軽くて施工性にも優れ、メンテナンスも容易という「パフカル」が その主役だ 。パフカルは、ウレタン素材が基材となっており、そのネーミングは、やわらかくて「軽いパフ」をイメージさせ、画期的な技術の象徴として「パスカル」の名前に由来する。販売開始されたのは2008年3月だから、まだいくらも経っていない。

 これまでウイスキーなどの商品開発に多く携わってきた井上氏は「酒を売るのは文化を売ることです。われわれはこのお酒の仕事も誇りを持っていますが、『地球を緑へ』というミドリエの仕事は、新しい緑の文化を作ること、これからの時代の使命ともいうべき重要な仕事として、世界に誇れると思っています。『人と自然と響きあう』という企業理念を掲げるサントリーにぴったりの仕事でもあります」と語る。

 サントリーミドリエは、サントリーの「環境緑化部」を昨年4月に独立させた会社で社員数は約20人。一般企業や官公庁などが販売先だ。井上氏は「壁面緑化などは同業他社もありますが、室内の土を使わない壁面緑化、特に小型の屋内観賞用は、まず真似できないで しょうね。 土はこぼれますし、一般的なスポンジでは均一に水を吸い上げることはできませんから」と語った。

 同社の緑化システムを採用したマンションは、東急不動産のほか野村不動産が千葉県で販売している物件の販売事務所でもみた。ニッチに変わるものとして最適だと思うがどうだろう。


同社ショールームで

◇     ◆     ◇

 記者は、井上氏が語ったように、屋上緑化とか壁面緑化は同業他社の製品もたくさん見てきた。しかし、屋内の壁掛けタイプをみて「これはヒットする」と感じた。そもそも壁に生きた植物を飾るという習慣・文化はこれまでにないものだ。

 記者は、自分で描いた油絵や買った油絵を壁という壁に飾っているが、このパフカルは壁に絵を飾る習慣・文化を一変させるのではないかとも思っている。「競合は絵画ではないか」と井上氏に質問をぶつけたら、「さぁ、われわれは絵画が競争相手だとは思っていません。『環境緑化』を広げていくのが仕事です」と言った。

 それにしても、機械力を使わずにウレタンの基材にどうして水を均一に行き渡らせることができるのだろう。毛細管現象を利用しているのだろうが(間違っていたらごめんなさい)、それにしても水が垂れないのが不思議でならない。

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 サントリーの広報にサントリーミドリエの売上高について聞いた。2008年の初年度は約1億円、昨年度は約2億円。今年度の目標は4億円という。絶対額は小さいが、倍々の伸び率だ。嬉しいことにRBAのホームページアクセス数の伸び率と同じだ。


同社ショールームで

(牧田 司 記者 2010年6月7日)