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旭化成ホームズ 「明るさ尺度値」を用いた照明計画

 
明るさ尺度値に変換した写真(左)と間接照明を用いたリビングのイメージ写真


  旭化成ホームズは6月1日、東京工業大学との共同研究結果に基づき考案した「明るさ尺度値(人の感じる明るさ)」を用いた照明計画を商品化の可能性も含めて幅広い検討を進めていくと発表した。

 「明るさ尺度値」とは、建築における照明計画の第一人者として知られる同大学大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 中村芳樹 准教授が提唱しているもので、従来一般的に用いられている照度計算に頼らず、人が視覚的に感じる明るさを定量化するための新たな概念。光を「削る」「均す(ならす)」「動かす」という3つのステップにより住空間の明るさを調節し、間接照明と調光機能を使ってこれを実現する。

 この設計手法を用いた照明計画では、直接照明を用いた一般的な照明計画と比較して、エネルギー消費が約6割削減され、結果的に省エネルギー・環境負荷低減にもつながったとしている。

 同社は、すでに一部の住宅展示場でこの設計手法による照明計画を採用し、一般公開しており、今後は商品化などの可能性も含めて幅広い検討を進めていく予定としている。

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 記者発表は、専門的な文言も出てきたが、「対比と順応を考慮した」(中村准教授)照明計画は納得できるものばかりだった。

 中村准教授や関係者の話を聞きながら、明るさもさることながら「きれいに見える」ことを考えていた。

 記者は、絵を描くことも見ることも好きだが、光はトップライトより横から、あるいは斜め、後ろ、下から対象物に当てたほうが陰影がはっきりして美しく見える。順光だと、女性のあごは暗いが、下から光を当てるとものすごくラインがきれいになる。もっとも好きな絵の一つ、フラゴナールの「読書する娘」などはその代表例だ。真横から光が当てられており、衣服に当たった光が少女のふっくらしたあごに反射している様子が微妙なタッチで描かれている。ルノワールの有名な「陽光の中の裸婦」の光りの当てかたも絶妙だ。木漏れ日の中に柔らかな女性像が見事に描かれている。順光だったら単なるヌードに過ぎない。黒田清輝の「読書」「湖畔」なども斜め後ろか横から光が当てられている。

 写真もそうだ。記者は女性を撮るときは必ず下から構える。そうしたほうが背が高くほっそり見え、胸も鼻も高く見える。

 そういえば、昔の住宅の光といえば、囲炉裏かろうそくだった。つまり明かりは下や横から照らされていた。天井につるされた電灯は「もったいない」からあまり明るくしなかった。

 同社には、人がきれいに見える明かりとか、食べものが美味しく見える照明計画なども研究してほしい。

(牧田 司 記者 2010年6月1日)