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経団連 14年ぶりに総合的都市政策提言

「わが国の持続的成長につながる大胆な都市戦略を望む」

 

 国土交通省は3月18日、平成 22 年地価公示を発表した。詳細は同省ホームページやマスコミの報道を読んでいただきたいが、記者は一段と疲弊する地方都市の経済と地価下落は憂慮すべき問題だと思っている。先日の三井不動産グループの記者懇親会でも岩沙弘道社長は、「地方は依然として厳しい」と地方の不動産市場について言及した。東京建物・畑中誠社長も地価公示に対し「地方圏ではオフィス、住宅ともにまだ厳しい状況が続いている」とコメントした。

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 地価公示の発表にタイミングよく、日本経済団体連合会は3月16日、「わが国の持続的成長につながる大胆な都市戦略を望む」と題する提言を発表した。グローバル化への対応から大都市、地方都市の再生・活性化、エネルギー、環境問題への取り組みまで総合的な都市政策まで言及したものだ。経団連がこのような全般の都市政策について提言を行うのは1996年6月以来14年ぶり。

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 提言は、はじめに「東京、大阪、名古屋に代表されるわが国の大都市は、バブル経済の崩壊を経て日本市場自体が縮小するなか、激しさを増すアジアの都市間競争への対応にも出遅れ、世界のトップランナーとしての魅力や活力を失いつつある。地方都市についてもモータリゼーションの進展などによって、かつて都市の中心部に位置していた商業、公共施設等が郊外へと移転し、中心市街地が賑わいを失うなど衰退が続いている。加えて、人口減少・少子高齢化、地球環境問題、地方財政の悪化といった課題も都市のあり方に大きな変化を迫っている。すでに政府や地方自治体は都市や地域の再生に様々な対策を講じているが、必ずしも十分な成果が上がっているとはいえず、抜本的な対応が求められている」とし、各論について提言している。

 地方都市の活性化については「各地域には、四季折々の自然、風情ある街並み、細やかな人情やコミュニティ、歴史に裏打ちされた独特の文化や伝統、新鮮な食材や郷土料理、きらりと光る地場産業など、大都市にはない素晴らしい魅力に溢れている。地方都市においては、その土地に根付く豊かな地域資源に磨きをかけ、国内外へ発信することで活力を生み、自立していくことが大切である」としている。

 中長期的には「中長期的なわが国産業の国際競争力の強化、社会的要請への対応などに鑑み、とりわけ重要性の高い、 (1) 利便性の高い交通・物流インフラ、 (2) 高水準の業務・生活基盤、 (3) 環境と人に優しい都市構造、 (4) 内外の人々を引きつける観光インフラについて、早急に整備していく必要がある」としている。

 民間活力の活用にあたっては、「単に行政コスト削減の観点だけではなく、民間にとってもインセンティブがある仕組みづくりが欠かせない。そのための手段として、PFI (Private Finance Initiative) 、さらにはPPP (Public Private Partnership) の積極的な活用が必要である。PFI、PPPの利用拡大に向け、地方自治体に対する実務支援体制の整備、運営重視型や新たな分野への活用拡大、税制面でのインセンティブの付与、公有地・公有資産の有効利用等を早期に措置すべきである。また、使い勝手のよい制度とするために、案件の性質に応じた多段階選抜・競争的対話方式の本格的な導入等を、PFI法をはじめとする関連法制の改正により実現すべきである」としている。

 建て替にも言及し、「都市の住宅やオフィスの良質な建築ストックへの建替えを推進していくため、借地借家法上の正当事由、区分所有法やマンション建替え円滑化法上の各種決議要件等を緩和すべきである。あわせて、建替えのインセンティブとなるよう、環境性能や耐震性などに優れた良質な建築物については、容積率、建ぺい率、道路斜線制限等の各種の建築規制の緩和を図るべきである」としている。

 法体系にも触れ、「現在の都市計画、建築規制、開発規制は細部に至るまで複雑で多数の例外規定もあり、非常に難解である。国家戦略として大都市の再生を官民連携により進める上でも、地域の開発を地域自らの考えにより実施する上でも、現行の都市開発に係る法制を総点検し、不要なものは見直すなど、民間事業者、さらには広く国民にとって分かりやすい簡素な制度体系とする必要がある」と述べている。

 提言は最後に、「大都市が国際競争力を高めて国の成長エンジンになるとともに、地方都市がそれぞれの個性あふれる魅力を発揮して活性化するという青写真が現実のものとなるかどうかが、わが国経済の持続的な発展の鍵を握っている」「成長著しいアジアの需要を取り込み、『まちづくり』をわが国の新たな成長産業として発展させることもできる。そのために必要な「チームジャパン」体制の構築に、政府が民間と連携して役割を果たすことを求める」としている。

(牧田 司 記者 2010年3月18日)