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「専有部サービスはどこにも負けない」大京アステージ


大好評の「不用品出張買取サービス」


 これまでマンション管理会社は共有部分の管理のみが前提にあり、専有部のサービスは「アンタッチャブル」という不文律があったが、東急コミュニティーに続き、野村リビングサポートが分譲マンションの専有部サービスを標準化したことにより、業界は大きく動き始めた。マンション管理戸数トップの大京アステージの取り組みについて同社事業開発部長・山下敏之氏と同社グループカスタマーリレーション部長・東一智氏に聞いた。

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 同社は、既に2年前から本格的に専有部サービスを行っている。話は前後するが、最近のトピックスから紹介しよう。「不用品出張買取サービス」だ。同社は、総合リサイクルショップなど二百十店舗を展開するセカンドストリートと提携。マンションの管理組合を窓口に入居者の自宅を訪ね、不用品を査定して現金で買い取るシステムだ。

 昨年9月、試験的にある300戸を超える規模のマンションで実施したところ、1,600点を超える不用品を買い取った。その後、11月から本格的に始め、これまで約40カ所で実施。入居者に好評で、すでに今年の夏までは予約でいっぱいという盛況ぶりだ。

 専有部サービスについては2年前、警備会社と提携してマンショントータルセキュリティサービス「セキュアプラス」を行っている。管理組合と契約し、従来の共用施設などのセキュリティだけでなく、専有部をガードする「ホームセキュリティ」、「住まいの駆けつけサービス」、無料健康相談などが受けられる「生活サポートサービス」を開始した。ベネフィットクラブと提携した「セキュアプラス・ベネフィットクラブ」では、レジャー、エンターテイメント、スポーツ、健康、育児、介護、旅行、グルメなどの割引利用が可能だ。

 「駆けつけサービス」「生活サポートサービス」は1戸当たりにすると月額300円ですむシステムだ。「ホームセキュリティサービス」には急な発病やケガのとき、ボタンを押すだけで警備会社へ通報できるワイヤレス救急ボタンも設置できる個別オプションもある。

 この「セキュアプラス」は、現在まで約400組合、契約戸数にして2万戸に達しているという。しかもこの1年間だけで15,000戸増えている。激増したのは、契約条件を昨年4月からは3つステムのそれぞれ個別契約も可能にしたのが大きいという。新築段階から採用している物件もすでにある。

 両氏によると、同社が管理するマンションはグループ会社の分を含めると約 39 万戸(単独では34万戸)だ。管理戸数の多さは全国一で、2001年からトップだという。単独で管理する34万戸のうち、相続など売買が伴わない所有権移転件数は年間約7,000戸と同社は推定しており、このうちの半分ぐらいは同社グループの大京リアルドが仲介に関与しているという。

 「他と比べるものがないが、かなりの数値。まだ伸ばせるはず」(山下氏)と意欲を見せる。

 同社の強みは、管理戸数が全国一であることからくる数の優位性と多様な情報の収集・共有化が可能なことだ。東氏によると、24時間で受け付けているワンストッフサービスの「くらしサポートデスク」への問い合わせは年間 1万件を超えるという。そのうちの約35%が専有部についての問い合わせだという。

 「お客さんからの情報は、苦情も含め全国ネットワークを通じて共有でき、最良の対応もできる。これからはお客さんが中央にいて、もっとも近いのがわれわれ管理会社。最近ではコンシェルジュサービスのスタッフも自前(大京ライフ)で育てています。当社には、少なくとも2年前からは『専有部はアンタッチャブル』という概念はありません。どこにも負けない自負があります」と、山下氏は語った。


同社の「住まいの駆けつけサービス」の一つ

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 専有部サービスについては、同社の会長でもあり、高層住宅管理業協会の理事長を務める黒住昌昭氏が口を酸っぱくして「これからの管理会社は住生活総合サービス業を目指さないといけない。専有部サービスは無限の可能性を秘めている」と語っている。

 ここまでいう管理協の理事長を送り出している同社が専有部サービスをやっていないはずがないと思って取材を申し込んだが、その通りだった。

 各社の専有部サービスの取り組みは加速度的に進みそうだ。そのうち当たり前のサービスになる。記者は、警備会社がすでに個別で行っている、外出した形跡がないのに一定時間トイレなどの水が使用されていないときに緊急通報装置が作動するサービスも安価で受けられるようになりそうだ。その他諸々、管理会社が入居者の命綱≠ニなる時代がやってくるし、管理会社は入居者からそこまで信頼されるようにしなければならない。

(牧田 司 記者 2010年3月17日)