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 日本の再生は住宅・不動産業界から

 

 民間の調査機関によると、首都圏マンションの完成在庫は昨年末で約1万2000戸だ。未完成在庫を合わせると2万戸は下らないと思われる。昨年9月のリーマン・ショック以降は新築も中古も動きはばったり止った。

 ところが、年末になって緊急経済対策の一環として史上最高の住宅ローン減税と利下げが発表され、動きが一変した。マンションデベロッパーも一斉に在庫処分に動き、なりふり構わぬ値下げ販売に踏み切った。

 当初価格の2割、3割値下げは当たり前で、高額物件では数千万円単位で値下げ販売されている。お宅はいくら下げてくれるの? ≠ニいうのが最近の来場者の決り文句だ。足元を見られた供給サイドでは、ユーザーの指値まで限りなく下げるところもある。

 かつてのバブル崩壊時も在庫処分の値下げ販売は行われたが、これほど一挙に大手・中小の別なく値下げは行われなかった。「7割値下げ」として話題になった東京都住宅供給公社の「コープタウン見附橋」は分譲開始から実に8年後だった。これは極端な例だが、総じてデベロッパーにまだ体力が残っていたためで、値下げはだらだらと数年間にわたった。打撃を受けたのは金融機関と不動産業が中心だった。

 しかし、今回は未曾有の世界不況に見舞われ、自動車や鉄鋼、電気など基幹産業も大きな打撃を受けている。とりわけマンションデベロッパーが在庫処分を急ぐのは体力の問題もあるが、厳しい会計基準と金融機関の貸し渋り、貸しはがしが背景にある。半年先、1年先の資金繰りや返済計画のメドがたたなければ、継続企業の基準ゴーイング・コンサーンに疑義ありとなり、金融機関からの融資が受けられなく。金融機関も自己資本比率を維持するのに懸命だ。

 このような背景はともかく、いまはひん死の状態にある経済を再生することが求められている。日本住宅産業開発協会・神山和郎理事長(日神不動産社長)は、「人間で言えば血液ともいうべき金融が止ってしまった。これでは生き延びるのが難しい。輸血が必要な人間(企業)に輸血ができない。大変残念だ」と語った。

 とにかく今はモノ(マンション)を動かすことだ。モノが動けは人も動くし、カネも動く。

 なりふり構わぬ在庫処分を是としたい。東急不動産・金指潔社長は「消費はマインドで半分は決まる」と言った。幸い、販売現場はみんな元気だ。悲観論などほとんどない。現場に依拠することだ。新築も中古も動き出した。この流れを加速させて欲しい。

 日本の再生は住宅・不動産業界から≠ニいうスローガンを現実のものにしなければならない。

(牧田 司 記者 3月3日)