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一建設のジャスダック上場に思う

 恥かしい話だが、一建設(小泉公善社長)がジャスダックに12月25日付で上場したのを知らなかった。気が滅入るばかりだから新聞の株式欄など最近はほとんど見ない。知らなかったのはそのためだが、上場したばかりの会社が相次いで破たんしたのを見てきているので、中堅は上場などしないほうがいいとも考えていた。

 同社の上場は、建売住宅の売れ行きが急回復しているのが背景にあるとはいえ、正直驚いた。同社には少なからぬ縁がある。

 同社が飯田建設工業という社名で、西武池袋線沿線を中心に建売住宅を供給していた昭和50年代後半だった。同社の当時の社長はマスコミ嫌いとして知られており、業界紙の記者と雖もほとんど取材を受けなかった。しかし、同社は当時、年間数千戸の建売住宅を供給しており、飯田グループ数社の合計供給戸数は1万戸近かった。

 そんな会社の記事を書きたくて、何度も会社に足を運んだ。小さなモルタル造りの事務所で、ストーブや扇風機が現役≠ナ活躍していた。1時間待たされても会ってくれない日もあった。それでも粘った。そのうち、「記事にしない」条件で面会を許してくれた。どうして伸びたのかなど生々しい話を聞いた。社長は手弁当で、自転車通勤していた。大工そのものの人だった。もう時効だから書くが、「話す代わりに新聞代を無料にしろ」とまで言われた。

 その後、建売住宅供給ランキングのトップ会社としてずっと記事を書いてきた。バブル崩壊後は倒産の危機も伝わったが、何とか生きのびた。同社グループだった東栄住宅、飯田産業、アーネストワン、タクトホームが上場した。

 現社長には一度もお会いしたことがないし、取材もほとんどしていない。おそらく当時の幹部の方々は引退されているはずだ。いい商品を供給して飯田グループ≠牽引してほしいと願うばかりだ。

(牧田 司 記者 12月28日)