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所沢の再開発マンション レベルは高いが…


「ライオンズクオーレ所沢元町」完成予想図(左は公益施設)

 大京「ライオンズクオーレ所沢元町」 図書館、市民ホールなど併設

 先に大京「ライオンズ石神井公園ステーションゲート」を紹介したが、続いて大京「ライオンズクオーレ所沢元町」を紹介する。

 もともとこの物件は、日本綜合地所が再開発事業主のUR都市機構から保留床の譲渡を受けて分譲することになっていたが、同社が破たんしたために再入札が行われ、大京が落札、今回の分譲となった。どのような物件か興味があったから見学した。

 物件は、西武新宿線航空公園駅から徒歩10分、または所沢駅から徒歩13分、所沢市元町に位置する地下3階地上12階建て全63戸の規模。専有面積は約72〜100平方b、現在分譲中の住戸(6戸)の価格は3,520万 〜4,750万円。坪単価は158万円。竣工予定は平成22年2月1日。設計・施工は大林組。

 先に1期(28戸)が分譲されており、残りは6戸だから好調な売れ行きを見せている。現地販売担当者は「所沢駅圏でもっとも売れている物件。来年2月の竣工までに売れるはず」と早期完売に自信を見せていた。

 人気の要因は、単価が安い(相場は170万円前後だろう)ことと、棟内には市立の図書館などが併設され、別棟で公民館・市役所出張所・市民ホールが建設される複合マンションである点だ。全体敷地面積は約7,400平方b(再開発の事業面積は約1.1ヘクタール)もあるが、公益施設は3階建てで、建物も公道から48メートルセットバックして建てられる。超高層タワーマンションが林立している周辺の街並みとは対照的だ。

 UR都市機構がプランニングしただけあり、基本性能・居住性能レベルも高い。二重床・二重天井はもちろんだが、フローリングの遮音等級はL40だし、手すりも随所に設置されており、廊下幅はメーターモジュールが採用されている。

 総合的に見て、極めてレベルの高いマンションだ。ユーザーにも評価されているのもこの点だろう。設備仕様はURそのもので、大京仕様ではなかった。

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広く市民が買えるマンションにどうしてしない

 売れているマンションを批判などしたくないが、どうしてもいいたいことがある。それは、居住面積が広いものばかりの住戸プランについてだ。これは大京に責任があるのではなく、明らかに市やUR都市機構にある。

 記者は、住宅の質は基本的には広さだろうと思う。その意味では平均85平方bのURのプランは理解できなくはない。しかし、現在の一世帯当たり平均2.4人という市民の家族構成を考えると、どうして小家族向けの住戸をつくらなかったのか理解に苦しむ。

 民間はどのようなマンションをつくろうが勝手だ。事業が成功しようが失敗しようが自己責任だ。ところが、この事業は市が絡んだ再開発事業だ。住宅は市民に対して公平でなければならない。このマンションの最低価格はおそらく3,000万円を突破するはずだ。所得の低い層では手が届かないだろう。40〜60平方b台の2,000万円台の小家族向けプランを1〜2スパンでも設けていたら、申し込みが殺到したに違いない。残念でならない。

 この点を市に聞いたら、「事業施行したのはURで、保留床の処分について市は関知しない。コメントする立場にない」という答えだった。

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 この事業は「所沢元町北地区市街地再開発事業」で、総事業費は127億円。国、県、市が合計約24億円の分担金・負担金を拠出している。うち約13億円が市の負担だ。このほか市は保留床取得費として約63億円を投入している。平成11年の計画段階では30階建て超高層が予定されていた。その後の経済状況の変化と合意形成に時間を要し、今回の12階建てとなった。

 このマンションが建つエリアには、ざっと10本ぐらいの超高層タワーマンションが元町通り沿いに林立している。このマンションの低さが際立つが、この対照的な風景はどう理解すればいいのか。そして、計画から竣工までどうしてこのように長い時間がかかるのか、聞きたいものだ。

(牧田 司 記者 12月22日)