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「市場激変 忍の1年」

記者が選んだ今年の重大ニュース

 

 業界紙が取り上げているように、RBAタイムズの記者として今年の「重大ニュース」を選んでみた。この1年を振り返ってみると、住宅・不動産業界にとっては、「激変市場」「忍」「波乱万丈」の1年ではなかったか。

 業界紙各紙は「政権交代」を重大ニュースのトップに掲げている。たしかに政権交代は国民にとって重大ニュースだったに違いない。しかし、政権交代が住宅・不動産業界にどのような影響を及ぼしたのか、住宅政策がどのように変わったのかという視点で選ばないと意味がない。

 記者は、民主党政権は基本的には住宅重視だろうと考えているし、今後も政策変更はないと思っている。国交省や業界との関係もギクシャクしたものになっているが、そのうちに落ち着くのだろうと思っている。ただ、民主党の建設委員会担当議員は猛勉強をしてほしい。管理協の30周年記念式典で見せた醜態はいただけなかった。

 記者が重大ニュースの真っ先に選ぶのは、やはり今後の住宅・不動産市場に大きな影響を及ぼす住宅着工の激減だ。今年度は100万戸を大きく割り込み70万戸台にとどまりそうだ。千葉県では着工ゼロの月があったのには衝撃を受けた。このことを見ても、金融機関の融資姿勢の厳格化を浮き彫りにさせた1年でもあった。いつ着工減に歯止めがかかるか注視したい。

 リーマン・ショックによる金融不安、景気後退は業界を直撃した。住宅・不動産業の破綻も大きなニュースだった。主だった破綻企業を時系列的に列挙すると、富士ハウス、クリード、章栄不動産、ニチモ、日本綜合地所、ホリウチコーポレーション、パシフィックホールディングス、エスグラントコーポレーション、アゼル、中央コーポレーション、ジョイント・コーポレーション、藤沢建設、穴吹工務店などだ。

 暗いニュースも多かったが、明るい話題もあった。資金回転率が早い戸建て分譲会社が業績を急回復させている。大手デベロッパーを中心に、現在の市況にマッチした低単価マンションもよく売れた。

 マンションの買い取り再販、再生事業もクローズアップされた。当初分譲価格より大幅に値下げを行った結果、売れ行きはおおむね好調に推移した。ただ、今後は買い取り競争が激化し、地価下落後の単価が安い物件との競争も激しくなりそうだ。

 不動産流通業も厳しい1年だった。しかし、新築マンションの供給激減する一方で、取引件数は増えており、神奈川県と千葉県では中古マンションの成約件数が新築マンションの供給戸数を上回る逆転現象もあった。近い将来、中古住宅流通量が新築と逆転することをうかがわせた。

 道路などのインフラ整備費を除く経済波及効果は3兆円と見込まれていた2016年の東京オリンピック誘致が失敗したのも大きなニュースだった。業界紙はこのことに一言も触れていないところに関心のなさがうかがえる。誘致失敗はスタジアム周辺の晴海や有明のマンション開発などにも少なからず影響を与えたと記者は考えている。

 設立30周年を迎えた高層住宅管理業協会の積極的な動きも目立った。同協会はマンション管理業を「住生活総合サービス業」と位置づけ、どのような展開ができるか模索中だが、アンタッチャブルとされてきた専有部分に対するサービスの充実に期待したい。

 エコの取り組みが活発化したのも大きなニュースというより大きな動きとなった。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行され、先導的モデル事業も認可されてきた。マンションデベロッパーもCO 2削減の見える化≠ノ力を入れた1年だった。共用部分でのみ採用されていたLED照明は、技術開発により専有部分にも採用されるようになってきた。環境問題への取り組み如何が企業の優劣を測る尺度になりつつある。

 業界紙は、賃貸住宅への関心が高まったことも重大ニュースとしているが、記者はむしろ時代遅れの賃貸住宅事業がクローズアップされたと理解している。理不尽な礼金、更新料などは廃止の方向に向かいそうなのは歓迎すべきことだ。それにしても民間賃貸住宅部会での論議には失望した。貧しい賃貸住宅政策の転換と、レベルの低い賃貸住宅の質向上を図らないと大変なことになりそうだ。

 最後にRBA記者の今年1年の総括を紹介する。RBAは人の前に明かりを灯す∞記事はラブレター≠ェモットーだ。厳しい1年だったが、記者が暗ければ人の前に明かりなど灯せないし、業界と業界で働く方々を好きにならなければラブレターなど書けない。

 このモットーを実践したつもりだ。RBA野球の記事を含めると記事数は年間500本近くにのぼった。ニュースリリースを引き写すような記事はほとんど書かなかったつもりだ。極力現場に足を運んだ。

 その結果として、このホームページのアクセス数は年間で昨年比40%増の約20万件を達成できそうだ。これまで倍々で伸びてきたので伸び率は鈍化したが、個々の記事は見出しでなどで検索すると、上位にランクされるものも少なくない。

 辛抱強く読んでいただいた方々に感謝するとともに、来年も今年と同様に頑張り、少しでも業界のためにお役に立とうと考えている。

(牧田 司 記者 12月21日)