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穴吹工務店が更正法申請 破たんの原因 内にあり

 全国マンション供給大手の穴吹工務店が11月24日、東京地裁に会社更生法の手続き開始を申請し、同日保全命令を受けたと報じられた。負債額は約1403億円という。

 詳細は各紙に報じられているので省略する。経営が厳しいことは感じていたが、まさかという気持ちで大きなショックを受けた。昨日(24日)には、同じような地方展開で伸び、不況下でも大健闘しているマリモの決算記事を書いたばかりだけに驚きだ。

 水に落ちた犬≠叩きたくはないし、以下に書くことが的を射ているかどうかの確信も持てないが、率直な意見、感想を述べたい。

 率直に言って、同社が更正法を申請せざるを得なくなった主因は、環境の悪化ではないような気がする。組織そのものに問題があったのではないか。

 役員の解任をめぐって二転三転したのが信用不安を招いたと信用調査会社は報じているが、経営方針をめぐって社内では相当前から論議されていたに違いない。

 同社が、大都市圏ではなく地方展開でマンション供給トップ企業に上りつめることができたのは、家族主義的な経営にあったのではないかと思っている。もう20年以上も前だが、創業社長の故・穴吹夏次氏に初めてお会いしたときのことはよく覚えている。まさに大工の棟梁であった。記者より40歳も歳上だったのに、歩く速さは記者の数倍あった。息子さんの英隆氏(その後社長に就任)などは下足番のような存在だった。夏次氏は、同社のマンションを施工する現場の職人までも顧客∞営業マン≠ノするような人だった。

 顧客∞営業マン≠ニは、穴吹のマンションを職人の人たちが自発的にその友人、知人に勧めるという意味だ。その紹介による契約比率が信じられないぐらい高いのを聞いた。穴吹夏次氏は、会社の、そして関係者全ての棟梁にふさわしい家族主義的経営を貫いた人なのだろう。

 英隆氏が社長に就任しても、その伝統は引き継がれるものと思っていた。英隆氏が社長に就任して間もないころ、真っ黒な顔をして「全国を飛び回っていますから」と笑顔で語っていたのが印象的だった。同社を応援する記事もたくさん書いてきた。

 ところが、会社がどんどん大きくなるにつれて、英隆氏とは距離が広がる一方だった。ここ数年は言葉も交わしていない。

 同社が2007年に大京を抜き全国マンション供給トップ企業に躍り出たときも、記者は還って同社の行く末を案じた。

 同社との距離感は深まるばかりだった。同社との決別を決めたのはその前後だった。ある郊外マンションを取材して記事にしようと思い、高松本社の広報に連絡を取った。取材の意図、記者と同社との付き合いなども話したが、けんもほろろ。「第三企画? 知らない。RBAタイムズ? うちに何のメリットがあるのか」といった具合だった。

 一事が万事≠ニいう言葉がある。この広報の対応から、記者は悟った。「これは単に広報担当者だけの問題でない。会社組織に問題がある」と。そして、同社には頼まれても取材はしまいと決意した。

 まさか今日、会社更生法申請のニュースを聞くとは夢にも思わなかったが、会社更生に追い込まれる病巣は、目に見えない形で増殖してきたのではないだろうか。

(牧田 司 記者 11月25日)