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「総量規制」で窮地の貸金業 賃貸保証業へ参入か

 社会資本整備審議会住宅宅地分科会の「民間賃貸住宅部会」でも論議されているように、一部の賃貸保証会社などによる行き過ぎた督促行為や「追い出し」が社会問題化している。

 門外漢の記者は、いったい賃貸保証業者がどれぐらいの数字にのぼるのか分からないが、数十社にのぼるとも言われている。消費者金融業からの参入も多いと聞く。

 そこで気になったのが、消費者金融業に対する規制強化だ。行き過ぎた取り立ての禁止、「総量規制」の強化、グレーソーン金利の廃止などを盛り込んだ貸金業法が平成 19 年に改正され、来年の平成22年6月をもって全面施行されることになっている。

 「総量規制」とは、一口で言えば借り手の年収の3割を超えて融資をしてはならないという規制だ。この規制が消費者金融業を窮地に追い込んでいるといわれている。不動産業界の息の根を止められたバブル崩壊時の総量規制とよく似ている。

 消費者金融についても記者は全く分からないが、内閣総理大臣認可の自主規制機関「日本貸金業協会」のホームページで調べてみた。信じられない数字が並んでいた。

 平成20年4月現在の登録貸金業者は全国で3,757社だったのが、同21年3月には2,900社へと実に約23%も減っている。退会・廃業によるものが1,000社近くあるのが原因で、その一方で新規加入も年間で343社にのぼっている。

 つまり、おおよそ5年間に全ての会員会社が入れ替わるというすさまじい業界であることが分かった。このような出入りの激しい業界に総量規制をかければ、生き残れるのは3分の1程度と業界内では言われているようだ。

 このような規制強化によって事業展開が難しくなった貸金業者が、参入障壁のほとんどない賃貸保証業へ転出するという図式が浮かび上がってくる。

 財団法人日本賃貸住宅管理協会傘下の自主規制団体「賃貸保証制度協議会」が自主規制ルールを強化し、協議会の有志9社によって一般社団法人全国賃貸保証業協会も設立されたが、果たして悪質な賃貸保証業者を排除できるのか。貸金業の総量規制がもたらす影響が心配だ。

◇      ◆     ◇

 もう一つ、「民間賃貸住宅部会」で気になったことがある。信用情報のデータベース化について「真面目に(家賃を)払っている人にとってはプラス・得する制度」「(家賃)滞納者を大家の負担で救済すべきでない」「地方は家賃の下落、空室率のアップ、家賃の延滞が増え、お客を選べる状況にない。入居者募集に家電製品をプレゼントするほど。被害者はオーナー」などの意見が出たことだ。

 家賃滞納などによって大家が困っているということを述べたのだろうが、落語の熊さん、はっさん≠ナはあるまいし、大家が住宅困窮者を救済している話など聞いたことがない。空室率問題、家賃滞納なども賃貸業を営むなら当然リスクとして計算に入れるべきことだ。賃借人に問題があるような発言はいかがなものか。

 そもそも空室率のアップ、家賃の下落などは賃貸住宅そのものに魅力がないからではないか。居住面積を始め設備仕様が分譲マンションと比べ比較にならないほど劣っており、その割に投資利回りが高いのが賃貸住宅だ。「原状回復」「更新料」「礼金」もしかり。賃貸が劣悪・貧困だからこそ問題が発生する。

 部会は残り1回しか開かれないが、徹底して論議を行い、貧しい賃貸住宅政策を改めるよう政府に迫って欲しい。

(牧田 司 記者 11月12日)