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管理協 「マンションと地域社会との共生」防犯セミナー


「マンションと地域社会との共生」防犯セミナー(東京国際フォーラムで)

 「管理会社は居住者の様々な問題に取り組むべき」坂本さん

 高層住宅管理業協会(黒住昌昭理事長・大京アステージ会長)は10月24日、設立30周年記念事業の一環として「『マンションと地域社会との共生』防犯セミナー」を開いた。関係者ら約100人が参加した。

 冒頭に挨拶に立った黒住理事長は「これからはマンションが建設されることによって安全・安心・快適な街になるよう、周辺の方々とコミュニケーションを図ることが重要。協会は『防災』『防犯』の問題について息の長い活動として取り組んでいきたい」と語った。

 セミナーでは、警視庁生活安全部 生活安全総務課 生活安全対策第一係長・橋本満氏が「マンションとその近隣での犯罪傾向と対策について」、聖徳大学 児童学部児童学科准教授・真壁坤子氏が「マンションが地域社会と共生することによる防犯効果」についてそれぞれ講話。ハード面の防災対策はもちろん、住民らによる「声賭け運動」「挨拶運動」が防犯抑止力として大きな効果があることを強調した。

 このあと、三鷹市生活環境部安全安心課主事・朝倉雄平氏とディアプレイス三鷹管理組合の坂本寿明氏による「マンションが地域社会に貢献できること」について報告がなされた。管理協は、市と管理組合の地域貢献活動に対して感謝状を贈った。


挨拶する黒住理事長

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 記者は、橋本氏や真壁氏の講話はもちろんだが、三鷹市とディアプレイス三鷹の取り組みに注目した。三鷹市は、平成15年から「安全安心・市民協働パトロール」を実施しており、19年からは都の「東京都地域防犯モデル事業」として市内連雀地区を指定。連雀地区は人口の40%が居住しており、他の地区と比べて共同住宅が多く、空き巣や自転車盗、引ったくりが多いエリアだという。

 そこで市は、町会・自治会とマンションなどの共同住宅との連携を図り、エリア内のマンションに町会への参加を呼びかけている。エリア内にある14棟ある大型マンションのうち8棟が町会に加入、所帯数にして約80%強がマンションの住民という。

 ディアプレイス三鷹は、16年3月に完成した全100戸のマンションで、約300人が居住。小学生以下が約70人というように子育てファミリーが多いのが特徴だという。

 坂本氏は、完成時に残っていた住戸を購入したが、その住戸購入者が管理組合の理事に就任することが決まっており、理事に就任。理事長を引き受けた。その後も「相談役として残って欲しいといわれまして、今年は顧問として活動しており、町内会の活動も行っており、町会とマンションのパイプ役として活動している」とのことだった。

 昨年3月には、オートロックマンションでもあるにもかかわらず5階と7階の住戸に思いもよらぬ空き巣被害があったことが、住民同士の結束を強めるきっかけとなり、「ディアプレイス三鷹子ども見守り隊」も立ち上げた。

 坂本氏は「町会とマンションのパイプ役として管理人の方が大きな役割を果たした。管理会社はハード面の業務だけでなく、入居者の個々の問題にも業務を拡充すべき」「団塊世代やそれ以上の年代の方は若い世代を育てる意味でも積極的に活動に参加すべき」と語った。

 報告によると、市内の刑法犯罪認知件数は平成15年には2690件だったものが、取り組みを開始してから年々減少しており、平成20年は1952件へと大幅に減っているという。


黒住理事長から感謝状を受け取った朝倉氏(左)と坂本氏

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 三鷹市とディアプレイス三鷹の取り組みは、管理協が目指す「住生活総合サービス業」の実践に示唆するものが多い。取り組みが成功しているのは、市の働きや初代理事長に人生経験豊富な坂本氏が就任したこと、管理人個人の貢献など、いくつもの幸運な要素が重なった結果だ。

 記者は、マンションの資産価値を維持・向上させるのはハード面の維持管理はもちろん、住民同士のコミュニケーション形成が重要だと考えているが、現行の「区分所有法」「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」は、コミュニティ形成についてほとんど触れておらず、専有部分には立ち入らないという不文律がある。しかし、マンションの管理を円滑・適正に行えるかどうかは、全て居住者間のコミュニティ形成にかかっている。マンション管理とコミュニティは、快適なマンション生活を送るためのいわば車の両輪だ。

 「住生活総合サービス業」を目指す管理協の今後の活動を見守りたい。

(牧田 司 記者 10月26日)