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 20坪の3LDKが全567戸の6割弱

住友不動産・新日鉄都市「アクラス」に注目


「AQURAS (アクラス)」完成予想図

 住友不動産(事業比率60%)と新日鉄都市開発(同40%)が共同で11月に分譲するマンション「 AQURAS (アクラス)」の記者発表会が9月10日行われた。今後の需要動向を探る意味で極めて興味深い物件だ。

 物件は、総武線平井駅から徒歩15分(運行予定のシャトルバスで約5分)、または東武鉄道亀戸線小村井駅から徒歩13分、江戸川区平井7丁目に位置する14階建て全567戸の規模。専有面積は約55〜86平方b、価格は未定だが、3LDK(66平方b台)で3,400万円台の予定。坪単価は170万円。完成予定は平成22年1月下旬。設計・施工は前田建設工業。

 記者が注目したのは、そのアクセスと価格・単価、プランについてだ。

 現地の用途地域は工業地域だ。記者発表会は亀戸駅近くのマンションギャラリーだったが、住環境が気になったので、事前に現地まで歩いた。嫌悪施設があるのかないのか確かめたかったからだ。

 結論から言えば、ほとんどない。発表会に出席した住友不動産マンション事業本部営業第一部統括所長・遠藤毅氏も「現地の一部には工場があるが、隣接地はすでにマンションが建っており、敷地は工業地域の用途としては最後に残されていた土地。嫌悪施設はほとんどない」と説明した。

 敷地の南西側にはすぐ旧中川が流れる。魚も泳ぐ川で、川岸もきれいに整備されている。住環境にさほど問題がないことが分かった。

 問題はアクセスだ。徒歩15分の表示で、駅まで通勤に歩く人もいるだろうが、まず難しいと判断した。駅から現地までは戸建てや小工場など建ち並び、商業施設などの利便施設も乏しい。これは販売に大きなネックとなると判断した。正直、「どうして売るのだろう」と思った。

 しかし、発表会で無料のシャトルバスを 1 時間につき4本運行することを聞いた。駅から距離がある大型マンションなどではシャトルバスの運行は少なくないが、無料というのは少ないはずだ。通勤時には都営バスを合わせると1時間に12本運行されるという。これで駅遠≠フ難点もかなり解消される。

 もう一つ、価格・単価、プランについて。坪単価の170万円はやや高いような気がしないでもないが、用地の取得時期が3年前ということだから、妥当な価格か。

  グロスは確かに安い。全567戸のうち約66平方bの3LDKは実に331戸ある。比率としては約58%だ。このほかにも50平方b台の2LDKも1スパンあるから6割以上が最多価格帯の3,400万円台以下となる。

 記者は、20坪の3LDKがメインだった昭和50年代〜60年代前半のマンションを思い出したが、あるいは今の時代の要請かもしれないとも考えた。立地環境、アクセスを考慮すると、このような一次取得層にターゲットを絞り込んだ物件が成功するのかもしれない。

 物件のセールトークでも「プールとかフィットネスなど管理費に響く過剰な共用施設・サービスを抑え、その代わりに無料のシャトルバスとか100%自走式駐車場などを充実させた」と謳うようだ。レンタブル比率(有効率)は容積率に対して96.18%だから、相当高い。1平方b当たり月額管理費も180円だから、これはかなり安い。

 以上のメリット・デメリットをユーザーがどのように判断するのか興味深い。1期は200〜250戸を供給するという。


エントランス外観(完成予想図)

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 驚いたことが一つある。反響が約2000件、来場予約が約400件ということだったが、うち江戸川区は約2割で、墨田区、江東区などの周辺各区が多く、千葉県の20%、神奈川県の10%、埼玉県の6%を合わせると3県で36%も占めている点だ。都内の3LDKで3,400万円台≠ニいうのはかなりインパクトがあるのだろうか。江戸川区は子育てに手厚い優遇策を取っているのもファミリー層をひきつけているのかもしれない。


現地の空撮合成(マンションの右側の建物は都営住宅、左側は民間マンション)

(牧田 司 記者 9月9日)