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「大和田」「越谷大袋」―ヒット作連発 ポラスの建売住宅


「カーサ・ビファイン越谷大袋」モデルハウス

 価格をはるかに超える満足度を提供

 建売住宅やマンションデベロッパーがいま何をすべきか、どのような商品企画が売れるのかについて大いに参考になりそうな物件を紹介しよう。ポラスグループの中央住宅の「カーサ・ビファイン越谷大袋」(全18戸)と「リブイン コテージ大和田」(全20戸)だ。「越谷大袋」は年初からの販売開始で残り3戸、「大和田」は昨年11月に分譲開始し、残り1戸。双方ともほとんど2週間の間に売れた物件だ。

 ここでは、「越谷大袋」について詳報する。「大和田」の物件については現地を見ていないので省略するが、デザイン、コンセプトなどは「越谷大袋」とほぼ同じだそうだ。

 「越谷大袋」の物件は、東武伊勢崎線大袋駅から徒歩9分、越谷市大字袋山字根河原に位置する全18戸の規模。1戸当たり土地面積は100〜128平方b、建物面積93〜102平方b。価格2.890万〜3.890万円。構造は在来工法。完成予定は4月20日。敷地の南西側には大袋東小学校が隣接している。現地にはモデルハウス1棟が建っているが、ほかは工事が始まったばかりだ。

 関係者は、この物件概要から小学校に隣接し、価格が安いから売れたのだろうと考えるかもしれない。その通りだ。しかし、学校に隣接しているから、価格が安いからといって売れるのがいまの市場でないこともご存知のはずだ。

 なぜ売れたか。商品企画が抜群だからだ。価格をはるかに超える満足度を提供できているからともいえる。

 テーマはやさしさ≠セが、モデルハウスではその企画意図が手にとるように分かる。以下、いくつか紹介しよう。

 まず、ユニバーサルデザインについて。同社がユニバーサルデザインに力を入れていることはことさら取り上げることではないが、改めて書く。@全ての柱の角は面取りをし、コーナー巾木も丸いものを使用A水回り部分は極力引き戸を採用、キッチンカウンターの角は面取りを施すB階段ステップは16段で、蹴上げとステップは色を変え、デザイン処理している(同社の階段はリビングイン型というのは常識)――などだ。

 もちろん、このほかやさしさ∞こだわり≠ェ随所に施されている。次世代省エネ仕様にしているのも大きな特徴の一つだ。保温浴槽、複層ガラスの採用などを採用することで、年間の光熱費が数万円節約できることを分かりやすくモデルハウスで説明しているとのことだった。

 大小の窓をたくさん採用しているのも目立つ。これによって、北側道路の住戸でもリビング・ダイニング、居室の採光・通風が得られるよう配慮している。

 キッチンはヒット商品だというヤマハ製だが、調理をしながらテレビをみるようオープン型で、ボウルは人 造大理石一体型のものだった。天井高は2.7メートル確保されている。

 細かなこだわりでは、回り縁だ。一般的には何の細工もデザインも考慮しない見切り型のものが使用されているが、ここでは白の壁と同系色の目透かし天井≠採用している。

 玄関ホール、リビングにはニッチがたくさん採用されているが、これも壁面の色と違えることでデザイン性を高めている。

 これだけではない。2階バルコニーの道路に面した壁はプライバシーを考慮して一面が壁になっているが、小学校に面した壁はスリットを入れて低い視線からでも緑が眺められるようにしている。オープン外構では、わざわざ芝生の法面を設けて変化を持たせ、敷地内の電柱はコンクリではあるが、建物デザインにマッチするようブラウンにした。

商品企画を先導したスーパーエース*村壮一郎氏(35)

 「チームワークの勝利。社内競争もいい方向に」


野村氏がデザインしたキッチンサイドのニッチ

 この「越谷大袋」と「大和田」のヒット商品を主導したのは、入社13年目の同社戸建分譲事業部営業企画設計課係長・野村壮一郎氏(35)だ。野村氏は次のように語った。

 「以前はパンフレットなしでも図面と簡単な仕様書だけで売れましたが、いまは先行モデルをつくらないと売れません。わたしの部署は企画が10人ぐらい、全体では約90人ですが、みんなワイワイガヤガヤやりながら企画を煮詰め、もちろん企画意図は営業にも徹底させている。チームワークがいいからでしょうか。お互いが切磋琢磨して同じベクトルに向って競争しているのもプラスに働いているのでしょう」と。

 図面だけで売れたのものがモデルハウスをつくらないと売れなくなったというのは、それだけ市場が厳しくなってきたということだが、この厳しい時代に先行モデル1棟で売れるのだからこれまた凄いことだ。

◇    ◆    ◇

 取材に同行した同社の広報マンは「野村はスーパーエース=B女性の心が読めるのか、デザインがやさしい」と語ったが、野村氏はまんざらでもなさそうに「見た目とは違うんです」と応えた。野村氏は、マンションが大苦戦の鎌ヶ谷でも大型案件を抱えているそうだが、今回のような商品企画で挑めばひょっとしたら売れるかも≠ニ記者は考える――商品化されるころにまた取材したい。

  
主寝室(他の居室、リビングなども窓がたくさん設置されている)と目透かし天井

    
カウンタートップ・ボウル一体型キッチンとオプションの書棚(書棚は12万円とか。マンションのモデルルームなどでは数十万から百万円もするものが多い)

(牧田 司 記者 1月23日)