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大手堅調 中堅は資産目減り目立つ 第1四半期決算

38社合計で総資産は4,084億円減少

 上場不動産会社の平成22年3月期第1四半期決算が出揃った。大手デベロッパーは厳しい市況下で健闘し、中堅は値下げなどで販売戸数を増やしながらも、金融機関の厳しい融資姿勢から棚卸資産などの総資産を減らし、現金・預金も返済金に消えるなど依然として厳しい経営環境が続いていることが分かった。総資産額は、集計した38社だけでもこの1年間以内に4,084億円減少した。

 

 厳しい市況化でも健闘しているのが大手デベロッパー。中でも三井不動産、野村不動産ホールディングスは増収増益を確保した。

 三井不動産は、前期に竣工稼動した「青山 OM−SQUARE」や今期に新規開業した「三井ショッピングパーク ららぽーと磐田」などが収益に寄与。賃貸部門は前年同期に比べ82億円増収。オフィス空室率(単体)は3.1%と前期末(2.5%)に比べ上昇。分譲は、大型物件の竣工があったことなどから前年同期に比べ254億円の増収。契約進捗率と完成在庫は前年同期比やや悪化した。仲介・販売受託・コンサルティングは、個人向け仲介が前年同期に比べ取扱件数は増加したが、取扱単価の低下により減収となった。

 野村不HDは引渡しマンション・戸建てが前年同期比42.3%増の743戸となり、売上高が前年同期比2.3倍の578億円にのぼった。ビルの空室率は3.9%となり前期末比1.3ポイント悪化した。自己資本比率は公募増資により前期末の17.0%から5.5ポイント改善し22.5となった。

 このほか、東京建物が子会社の東京建物不動産販売が期初の業績予想を下回る見込から純利益は80億円から60億円へ減少すると発表したが、個別業績は売上げ、利益とも増加すると上方修正した。

 住友不動産は減収減益ながら1ケタ台にとどまった。三菱地所、東急不動産は減収減益となった。

 マンションデベロッパーで大健闘しているのがゴールドクレスト。安い頃に仕入れたマンション用地が収益に寄与した模様だ。自己資本比率も0.4ポイント改善して46.5%と高い水準を保っている。販売用不動産は前期末の627億円から528億円へと大幅に減少したが、仕掛販売用不動産は242百万円増加した。通期業績は大幅な減収減益となる見込だ。

 マンション専業の大京やコスモスイニシア、日神不動産などは販売戸数が激増した半面、総資産や純資産が大幅に減少した。

 大京は引渡し戸数が前年同期比506戸増の1,488戸となり、分譲部門の売上げは前年同期比43.1%増の552億円となった。総資産は、借入金返済により現金及び預金が252億円、棚卸資産が195億円それぞれ減少したため前期末比412億円減少した。

 コスモスイニシアは、マンション・戸建て販売が前年同期の159戸から991戸へと大幅に増加し、分譲部門の売上高も前年同期比149.9%増の354億円を計上した。多額の減損処理を行ったため純資産合計は449億円の債務超過となっており、事業再生ADR手続きにより再建を目指す。

 日神不動産は、マンションの販売戸数が前年同期の111戸から289戸へと大幅に増加したため売上高は8,056百万円(前年同期比81.8%増)、営業利益は76百万円(前年同期は374百万円の営業損失)、経常利益は74百万円(前年同期は399百万円の経常損失)となった。販売用不動産、棚卸資産の減少などから総資産は前期末比10.7%減少し500億円となっている。

 タカラレーベンは、大幅減収減益となったが、通期では買取再販マンションが好調なことなどから減収となるものの営業利益は15億円から16億円へ、経常利益は43億円から49億円にそれぞれ業績予想を上方修正した。

 このほか中堅の総資産の大幅減少が目立つ。プロパスト、セントラル総合開発、総和地所、アーバネットコーポ、グローバル住販、飯田産業、サンウッド、サンシティ、タクトホーム、明豊エンタープライズなど軒並み前期末比20%以上減少した。セントラル総合開発、新日本建物、サンシティは自己資本比率が4%以下となっており、アーバネットコーポ、明豊エンタープライズなども大幅に自己資本比率が悪化している。 プロパスト、総和地所は債務超過に転落。

 ここにきて回復基調が明らかなのが戸建て分譲が中心のデベロッパー。東栄住宅は、期末在庫の処分に努め、戸建て・中古再販戸数が前年同期比93戸増加したことなどから不動産売上高は231億円(前年同期比13.2%増)となった。総資産は販売用不動産が減少したため前期末比17.5%減の590億円となっている。自己資本比率は前期末比6.2ポイント改善し39.4%となっている。

 飯田産業の4月期決算は、大幅な減収減益となったが、今期の通期業績予想では売上高1,126億円(前期比8.2%増)、営業利益82億円(同207.0%増)、経常利益72億円(同308.6%増)を見込んでいる。自己資本比率は前期末比10.0ポイント改善し39.3%と高い水準をキープ。

 アーネストワンも減収ながら営業利益、経常利益とも37億円確保。棚卸資産の圧縮を図りながら、現金なども前期末比で43億円増やし119億円となっている。自己資本比率も12.6ポイント改善し56.1%と上場デベロッパーではナンバー1となっている。

(牧田 司 記者 8月18日)