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中堅デベに新たな難問 売りものがなくなる♂死の危機

 大手デベロッパーは売上高の2〜3倍の棚卸資産を確保

 中堅デベロッパーを中心とする赤字販売によりマンションの在庫は急速に減少しているが、ここにきて新たな難問が浮上してきた。「売りものがなくなる」事態が現実のものになりつつあるからだ。

 ある中堅のデベロッパー社長が嘆く。「当社もそうだが、マンション在庫は秋口までにさばける。これはこれで結構なことだが、その先の売りものが底をつく。銀行の不動産開発向け融資が完全にストップしており、仕込みが全然できていない」

 別表は、主な上場不動産会社の棚卸資産(販売用不動産、仕掛販売用不動産)の増減をみたものだ。

 これによると、三井不動産、三菱地所、住友不動産、野村不動産ホールディングス、東急不動産、東京建物など大手デベロッパー6社の21年3月期の棚卸資産額は、20年3月期と比べそれほど減少していない。野村、住友、東急、東建(12月決算)の各社はむしろ増加している。売上高に対する比率でも2〜3倍を確保している。つまり、おおよそ向こう2〜3年分の販売用不動産を確保していることになる。

 その一方で、その他の中堅デベロッパーは軒並み棚卸資産を大幅に減らしている。主だったところで増加しているのは NTT 都市開発、すてきナイスグループぐらいだ。NTT都市開発は売上高に対して3.7倍の棚卸資産がある。すてきナイスは売上高との比較では1.17倍となっている。

 その他の中堅は深刻だ。倍率で1以上を確保しているのは有楽土地、明和地所、ゴールドクレストしかない。ゴールドクレストは大手デベロッパー並みに2.11確保しているのが目立つ。他はほぼ前期より3割ぐらい減らしており、ランド、総和地所、新日本建物、 EMCOM リアルティなどは売上高に対して半分以下となっている。

 マンションの場合、用地取得から販売までは少なくとも半年はかかり、一般的には1年以上かかる。このままだと、中堅どころは半年から1年で棚卸資産が底をつく。言葉は悪いが、売りものがなくなれば餓死≠キるしかない。

 生き残るために残された道は、3〜4万戸といわれる投資用・リート用マンションの買取販売や、売れ残りマンションの買取販売しかない。これらの物件の争奪戦が激化するのは間違いない。

(牧田 司 記者 6月8日)