商品企画レベル高い ニチモ「ヴォアール鶴見寺谷」 「ヴォアール鶴見寺谷」
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最悪のマンション市場下で大健闘しているマンションを紹介しよう。ニチモの「ヴォアール鶴見寺谷」だ。分譲開始は昨年の11月。リーマン・ショックでマンションの動きがばったり止ったときだったが、全31戸のうちこれまで半数が契約済みだ。販売担当者は「あと3カ月で完売できる」と自信たっぷりだ。 物件は、 JR 京浜東北線鶴見駅から徒歩10分、横浜市鶴見区寺谷2丁目の一角に位置する5階建て全31戸の規模で、専有面積は約40〜76平方b。坪単価は221万円。現在分譲中の価格は2,890万〜5,240万円。建物は昨年12月に完成済み。施工は白石建設。 販売開始から2カ月少しで半分が契約済みというのは大健闘といえる売れ行きだ。 人気の最大の要因は、物件の特徴は、坂が多い鶴見駅圏のマンションの中で、駅からフラットの商店街を抜けて10分という立地条件のよさと、マンションなどの適地が売りに出ない住宅地という点だ。購入者のほとんどが地元居住者ということからも、地元から高い支持を受けているということが分かる。 商品企画が地元居住者のニーズにマッチしていることも見逃してはならない点だ。全31戸のうち60〜70平方b台のファミリー向け3LDKが15戸で、50平方b台の2LDKが12戸、4戸が40平方b台の1LDKという構成だが、それぞれのタイプとも企画意図が極めて明確だ。 もっとも高額の5000万円台の住戸は最上階にあり、玄関・ホール、リビングダイニングに面したパティオ付きだ。60平方b台の3LDKは、2人、あるいは3人家族を想定したものだが、部屋数を確保したいというニーズに応えるためにつくられた。1LDKや2LDKについては、キッチン、浴室などはファミリーと同じ仕様にし、主寝室とは別に多目的に利用できる居室を設けている。二重床・二重天井、逆梁ハイサッシも採用している。 この物件の仕入れから企画、販売までを担当している同社住宅事業本部販売統括部販売第二部課長代理・浅井圭吾氏は、企画意図について次のように語った。 「5000万円を超えると厳しいのは分かっていましたから、パティオ付きにしました。モデルルームとして公開してまもなく売れました。2LDKとしたのは、単身者でも広めのものを望まれる方が多く、世帯分離でお子さまに住まわせるケースも多く、資金援助するのだから訪ねていったとき、自分(親)の居場所もほしいというニーズに応えるためです」 浅井氏は鶴見区に8年住んでいる。いわば地元を熟知しているからこそできた企画なのだろう。このほか、細かな配慮もなされている。ほとんどが窓付き浴室になっており、開放廊下には花台が付いている。掘りこたつ付きタイプもある。エレベータホールにはエレベータの内部が見えるモニターがついている。電動シャッター付き駐車・駐輪場のシャッターは窓付きとして内部が確認できるようになっている。セキュリティについては、同社の単身女性の声を生かしたものだという。 ◇ ◆ ◇ 同社の経営環境は厳しく、株価は昨年末当たりから10円を切ったままだが、マンションの商品企画力はもともと業界でも上位にある。老舗企業でもある。このあたりを投資家ももっと評価すべきだろう。 今回の「鶴見寺谷」も商品企画レベルは高い。だからこそ最悪市場でもこれほど売れるのだ。記者も早期完売は間違いないと見た。 |
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(牧田 司 記者 1月19日) |