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街の魅力を訴えきれれば売れる

東栄住宅「ブルーミングヒルズ多摩センター」


「ブルーミングヒルズ多摩センター・ファーストレジデンス」

 

 まさか、このような形で記事にするとは思いもよらなかったが、これは両社に頑張れ≠ニエールを送る気持ちを込めた記事として理解して欲しい。東栄住宅が売主で、先ごろ販売受託したフージャースコーポレーションの「ブルーミングヒルズ多摩センター・ファーストレジデンス」の記事だ。

 物件は、京王相模原線・小田急多摩線多摩センター駅から徒歩13分、または小田急多摩線唐木田駅から徒歩10分、多摩市中沢2丁目に位置する8階建て全148戸の規模。現在分譲中の住戸(28戸)の専有面積は約70〜100平方b、価格は3,260万〜4,750万円(最多価格帯3,600万円台)、坪単価147万円。建物は平成19年12月に竣工済み。設計・施工は長谷工コーポレーション。

 一昨年12月に竣工済みであることでも分かるようにクリアランスのマンションだ。分譲開始は平成19年の春だった。当初の分譲単価は200万円。価格上昇が著しいときだった。少し前、扶桑レクセル(現大京)が坪単価143万円(駅から徒歩10分、所在地は八王子市)で分譲していたころだ。

 記者は、20年近く多摩センターに住んでいるので、他のエリアよりは少しは地域の特性も分かっている。分譲開始されたとき価格(単価)に見合う価値≠フある物件なら売れると見ていた。記事にするつもりで、すぐにモデルルームも見学した。

 しかし、記事にはしなかった。価格(単価)に見合う価値≠ェあるとは思えなかったからだ。せっかくのSIが生かされていなかった。需要を喚起する宣伝も少なかった。単価にしては設備仕様もやや劣っていた。竣工時点で半分も売れないと読んだ。

 結果は、その通りになったはずだ。その後、竣工を前後して値下げ販売されたが、芳しくなかったようだ。市場の激変もあった。

 その結果が、今回のフージャースコーポの受託だ。

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 いま何戸残っているのかは書かない。この値段まで下げれば売れるだろうし、売って欲しいと思う。坪147万円といえば、前述の扶桑レクセルのマンションと同じぐらいだ。つまり価格が上昇する前に戻ったのだ。市場環境は、当時より厳しくなっているが、多摩センターの魅力を訴えきれれば売れると記者は確信している。物件自体は、共用部分などはよくできている。

 多摩センターの魅力とは、一言で言えば総合的なポテンシャルの高さだ。同じ京王相模原線の駅を批判はしたくないが、レベルが異なる。多摩市の財政力も悪くないし、いわれているほど多摩ニュータウンのオールドタウン化≠ヘ進んでいない。

 駅周辺では商業施設のリニューアル、新規オープンも進んでいる。規模は小さいが百貨店(三越)もあり、ホテル(京王)がある。小澤征爾氏が指揮をとるコンサートもパルテノン多摩でしばしば行われる。駅から南側の徒歩20分圏は完全な車歩分離の街になっている。

 そして何より魅力なのが、子育てに最高の環境が整っていることだ。マンションの側には24時間対応の多摩南部地域病院がある。現地から徒歩10分には市立図書館ができた。このほか、徒歩圏には多摩中央公園を始めたくさん公園がある。絶滅種といわれるランの一種も自生している。ザリガニだって捕れるはずだ。温泉も流れるフールもある。子育てにいいかどうかは分からないが、ゴルフ場も隣接している。(昨年までは、都心の一流店にも負けない美味しくて安いすし屋もあった)

 このように、都市の魅力と自然の魅力を両方兼ね備えた街は、少なくとも多摩地区にはほかにない。

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 問題は、このような街の魅力をこれまでのデベロッパーも販売会社も理解していないことだ。供給サイドが街の魅力を語れなければ話にならない。売れるものでも売れない。

 東栄住宅もフージャースコーポも、この物件にどれだけのスタッフが関わっているか知らないが、休日を返上して、全スタッフが多摩センター周辺を隈なく歩くことを提案したい。驚くほどの新しい発見があるはずだ。いまはハナミズキが咲き乱れ、季節的にはもっともいいときだ。

 もう一つ、東栄住宅にはいいた。同社はマンション事業を片手間にやっていたようなところがあった。ほとんどがアウトソーシングだった。今回で懲りたはずだ。高い授業料にはなったが、これからの事業で取り返して欲しい。


エントランス

(牧田 司 記者 4月20日)