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年々下がるマンション有効率の不思議 不動研の調査

 昨日、不動産経済研究所(不動研)が発表した「首都圏マンション市場動向」の発表資料を読んでいてビックリするデータがあった。

 契約率が上昇し、在庫もさばけているということではない。これはこれで結構なことなのだが、記者が驚いたのは「総建築延面積」に占める「総有効分譲面積」の割合(業界では有効率とか専有率、あるいはレンタブル比率と呼ぶ、以下、同社の発表に従って有効率と呼ぶ)が74.1%しかなかったからだ。

 分譲価格は、専有に含まれない共用施設とか共用部分の建築に要する費用を分譲価格に上乗せして決める。有効率が高ければ高いほど、建築費に占める分譲部分の割合が高いわけだから、分譲単価(価格)を引き下げられる。

 一般的にいえば、現在の有効率は85〜90%だといわれている。かつては80〜85%だった。有効率が上昇した主な理由は規制緩和だ。平成6年と平成9年に建築基準法の改正が行われ、地下室とか一部の廊下、エレベータホールなどの共用部分を容積率に含めない、いわゆる容積不算入が導入された。このほかにも容積の割増制度がある。

 このように、業界の常識からすれば、今回の不動研の数値は極めて低い。ありえない数字だと思ったので、同社に問い合わせた。同社によると、データの収集分析手法は以前と変わっていないとのことだった。例えば、昨年同月の有効率は68.8%であり、平成20年の年間平均有効率は72.6%だ。さかのぼって調べてもらったら、同12年の平均有効率は77.7%で、7年は81.1%となっている。

 詳細なデータ分析をしなければならないが、同社の調査によると有効率は年々低下していることが分かる。

 話が分かりやすいように例を示そう。土地代と建築費を合わせ坪100万円としよう。平成7年は有効率が81.1%だから坪単価は123万円だ。今年3月は74.1%だから坪135万円になる。有効率が7ポイント低下しただけで単価は約12万円上昇する。

 なぜこのようなことが起こるのか。その理由を記者は全く分からない。単純に考えれば、共用施設や共用部分の割合が増えているということなのだろうが、事業採算から考えたらありえない話だ。それとも、近年の絶対高さ規制などの規制強化で有効率が下がったのだろうか。あるいはまた、容積不算入は、かえって有効率を下げる結果になっているのだろうか。

  土地代がただでも建築単価は100万円を切れない≠ニいわれるが、これは建築費の上昇だけでなく、有効率の低下がもたらしているのではないだろうか。有効率を上げる、つまり共用施設や共用部分を少なくすることはマンションの価値を引き下げることにもつながりかねないが、有効率を上げれば分譲単価は引き下げられる。デベロッパーにとっては、どちらを選択するか悩ましいところだろう。

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 不動研でも誰でもいい。どうして有効率が年々下がっているのか調べて発表して欲しい。有効率の低下が何をもたらしたのか、共用施設の充実が有効率を引き下げている主因かどうか、有効率と売れ行きの関係はあるのかないのか、規制は強化されつつあるのかどうか、有効率を上げられるマンション適地が少なくなってきたのかどうか…などなど凄いデータになるはずだ。

(牧田 司 記者 4月16日)