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再上場の捨石≠ノしてはならない

西武不動産流通の解散

 

 4月3日のプロ野球開幕を直前に控え西武関係者とファンには2連覇の夢が膨らんでいるが、昨日(3月31日)は高揚する気持ちに冷水を浴びせ掛けられるような出来事が3つもあった。

 一つは、西武不動産流通の解散だ。昭和47年に西武不動産グループの流通部門として開設されて以来37年の歴史に幕を閉じた。沿線住民に親しまれてきた住まいのレインボー≠フ看板は降ろされた。

 もう一つは、西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載事件の判決が下ったことだ。東京地裁は株価の下落などで損害を受けた機関投資家に対して約237億円の損害賠償金を支払うよう同社に命じる決定を下したと報じられた。鉄道グループの利益が吹っ飛ぶ額だ。

 さらにもう一つ。36年の歴史を誇るアイスホッケーの名門チーム、西武の解散が正式に決まった。不動産流通と同じぐらいの歴史があるチームだ。

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 有価証券虚偽記載事件はともかく、西武不動産流通もアイスホッケーチームも、西武関係者やファンにとってはアイデンティティだ。同時に失う喪失感は計り知れないものがあるだろう。西武ファン≠自認する記者にとってもなんともやるせない1日になった。

 記者は、西武不動産流通の解散決定が西武ホールディングスから発表された1月9日、「理解できない西武不動産流通の解散決議」と題する拙文を当欄で書いた。今でも思いは変わらない。記事はコピーされて、関係者間で回し読みされたとも聞いた。

 その後、記者は同社に働く営業マンなどの率直な声が聞きたくて、「取材のお願い文」を持って、いくつかの営業所を回った。しかし、お願い文を配布したその日、「マスコミの取材に対しては本社を通じて受けるよう」という、西武不動産流通本社の通達が各営業所に伝達された。

 予想されたことではあった。それでも、記者は「きっと取材を受けてくれる人はいる」という確信している。近いうちに関係者の声をしっかりと伝えるつもりだ。

 記者の知る限りでは、解雇された79人の社員(1月9日の同社発表人数)のうち再就職が決まっているのは数人しかいない。西武ホールディングスは「再就職支援を引き続き行っていく」としているが、一部の若い人を除き前途は厳しいとも聞く。

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 記者は、西武グループの不動産流通会社がいつか復活すると信じている。不動産流通業は企業の都合で切られるような業種では絶対ないからだ。西武ファンが黙ってはいないだろう。

 昨日閉じられたホームページには「西武グループの一員として、地域の方々と共に蓄積してきた信頼関係という財産を活かしながら、流通事業を通じてすばらしい地域づくりに貢献していくことが、当社の存在価値だと思っております」(牧野博一社長あいさつ)とあった。

 いわば同社は地域住民との共有財産だ。わずか2億円の赤字解消のためために、あるいは再上場のための捨石≠ノしてはならない。総資産額が1兆6172億円もあり、グループ売上高が6611億円(いずれも平成20年度)もある大企業のやることではない。

(牧田 司 記者 4月1日)