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踏み台がないと出られないルーフバルコニー?

 

 住宅市場は厳しさを増すばかりだ。来場者はそこそこあるが、歩どまりが悪い≠ニいう声もよく聞く。歩どまりでいえば 20 %もあればいいほうで、一般的なマンションでは十数%だろう。歩どまりをアップさせるには、営業マンのレベルを高くすることも必要だが、それ以前に商品企画がユーザーのニーズを満たすものかどうかを考えるべきだ。

 こんな例があった。そのマンションは、最上階の専有面積約100平方bの住戸がモデルルームになっており、約50平方bのルーフバルコニーが付いていた。ところが、ルーフバルコニーと居室内は腰窓になっており、床面から窓までの壁の高さは約 50センチあった。若い人はともかく、高齢者は踏み台がないと出られない。これではルーフバルコニーの役割は果たさない。

 いうまでもなく、50平方bのルーフバルコニーがあれば、家族でバーベキューパーティもできるし、親子で水遊びもできる、ゴルフのパター練習もできる、タバコも吸えるなどなど、その用途は限りない。金額に換算したら数百万円の価値はあるだろう。だからデベロッパーは最上階住戸を広くして、なおかつルーフバルコニーをつけて販促につなげようとするのだ。

 問題はほかにもあった。洗面所は一般的なものより広めなのだが、驚いたことにリネン庫が全くなかったのだ。およそリネン庫が付いていないマンションなどほとんどないはずだ。

 これが2流、3流のデベロッパーならまだ許せる。このマンションデベロッパーは一部上場企業だった。マンションを売る資格がないといいたい。気の毒なのはこのようなマンションを買わされる(買わないだろうが)ユーザーであり、かわいそうなのは、このようなマンションを売らなければならない現場の営業マンだ。

 ほかの建売住宅では、サーキュラー階段が付いていた。これにも記者は唖然とした。デザイン性を重視したつもりなのだろうが、機能性を持たないものはデザインでもなんでもない。サーキュラー階段が危険極まりないものであることは、自らが上り下りすれば分かるはずだ。記者などは死の恐怖すら覚える。

 踏み台がないと出られないルーフバルコニー、リネン庫がない洗面室、毎日死の恐怖と向き合わなければならないサーキュラー階段…このようなものをつくる神経が理解できない。

歩どまりが悪い≠ニ嘆く前に、営業マンの尻をたたく前に、ユーザーのニーズを満たしているのかどうか、経営者も商品企画担当者も考え直すべきだろう。ヒントは、購入してもらえなかった8〜9割の来場者の声にある。

(牧田 司 記者 11月29日)