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「日本の活性化における住宅産業の役割」

東大でシンポジウム


シンポジウム会場

 

 昨日(25日)、「日本の活性化における住宅産業の役割」をテーマにした東京大学大学院経済学研究科が主催したシンポジウムが東大内で行われた。伊藤元重氏(東京大学大学院経済学研究科研究科長)の講演と、和泉洋人氏(国土交通省住宅局局長)・伊藤元重氏・岡本利明氏(旭化成ホームズ顧問)・金本良嗣氏(東京大学公共政策大学院院長・同大学院経済学研究科教授)の4氏によるパネルディスカッション(司会:井堀利宏・東京大学大学院経済学研究科教授)にハウスメーカー関係者など200人を超える人が参加した。  

 記者も参加したのは、尊敬する先輩記者にすすめられたためだが、何よりも日本の活性化≠ニいうテーマが素晴らしかったからだ。どうしてデベロッパーの名がなく、住宅産業だけなのか不思議にも思ったが、後援が住宅生産団体連合会だから致し方ない。

 伊藤氏は、「非常に深刻な状態にあるわが国経済の活性化シナリオをどう描くか」と問題提起し、「明日の幸せのためにどう需要を創出するかが重要で、国民が一番不満を持っている住宅分野で需要をつくる仕組みを構築すべき。市場メカニズムだけでは十分な需要をつくることは困難。高齢者が持っている金融資産、不動産資産をどう利用するかが大きなカギ」と述べた。

 このほか、他のパネラーも異口同音に住宅産業の果たす役割の大きさを強調した。

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 記者が考えさせられたのは、金本氏や伊藤氏がわが国の中古市場が育たない≠ニいう問題についてだった。この問題について、伊藤氏は「ビジネスには農耕型と狩猟型がある。狩猟型とはものを売る商売。農耕型とはマーケットをつくる商売。住宅産業は市場をつくってこなかった側面はないか」と発言された。

 同感だ。住宅メーカーもマンションデベロッパーも住宅を売ることに大きなエネルギーを注いできたが、それを収穫するという発想に欠けていた。いつも景気動向に左右されるのは、住宅事業を深耕することを怠ってきたからでないか。

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 記者が面白く思ったのは、伊藤氏の講演に対する和泉住宅局長の感想だった。和泉氏は「さすが伊藤先生。伊藤先生の話は筋が通っている。私も経済学者だったら、毎日、ストレスがたまらない筋の通る話ができかもしれない。問題があるところにニーズ≠ェあるというお話では、住宅が問題ありと言われるとガクッとくるが、内需の柱にすべきという点では元気が出る」などと語り、笑いを誘った。

 和泉住宅局長はわが国の住宅政策についても話されたが、伊藤氏に負けないぐらい筋が通った話をされた。

 和泉氏は55歳になる現在まで、小学時代を除き、ほとんど通勤・通学に片道 1 時間半かけているというが、これはもったいない。大きな損失だ。都心の官舎かマンションにでも住むべきだろう。その分、時間が節約でき、仕事ができる。

 「タワーマンションの将来が不安」とも述べられたが、大丈夫。それより郊外に住むことで、万が一の指揮が取れないことに問題がありそうに思うが…。いつかお話する機会があったら、ぜひとも都心のマンションを薦めよう。

  
伊藤氏                右から和泉氏、伊藤氏、岡本氏、金本氏、井堀氏

(牧田 司 記者 11月26日)