RBA HOME> RBAタイムズHOME >2008年 >


 ローン減税発表の逆効果 デベロッパー救済を

 

 恐れていたことが現実のものとなっている−−最大控除額600万円という過去最高の住宅ローン減税が打ち出された10月30日以降、マンションや建売住宅がさっぱり売れなくなったというのだ。

 考えてみれば、これは当然のことだ。今年12月末で期限が切れる現行制度では、10年あるいは15年の選択性で、借入金の年末残高の限度額2000万円に対して最高控除額は160万円だ。

 実際には、過去最高のローン減税をフルに享受できる層は極めて少数だが、来年1月以降に入居すれば最高600万円の控除が受けられると聞けば、誰だって年内の購入・入居は避けるはずだ。完成済みの物件については、買い控えに拍車がかかっているのは間違いない。

 このため、マンションや建売住宅の完成在庫を抱えるデベロッパーは「さっぱり動かない」と頭を抱えている。政府発表がなければ、年末で期限が切れるローン減税の駆け込み需要≠ェ期待できたのに、今回は全く逆の効果をもたらしたからたまらない。

 ある都内の5000〜6000万円台の完成在庫を抱えるマンション担当者は、「そうでなくても来場者が少ない。何とか年内入居にもさかのぼって新しい税税が適用できるようにして欲しい」と語っている。

 一方、ある千葉県の郊外マンション担当者は、「購入される方のローン借入額はそれほど高くないので買い控えの影響は出ていない」という。

 また、ある都内の億ションの販売現場では「入居がまもなく始まりますが、お金持ちの方は関係ないようです。入居を来年に延ばされるという声は上がっていません」という声も聞かれた。

 この問題について、財務省の担当者は「まだ何も決まっていない段階でコメントのしようがない。(制度発表によって買い控えに拍車がかかっているが)その問題については国交省さんの担当。遡及適用というのは前例がない」という。

 国交省にも聞いてみたが、「現段階で遡及適用の話は上がってきていない。業界からそのような声が上がってきた段階で検討したい」とのことだ。

 ◇     ◆      ◇

 本来的に住宅ローンを景気対策の道具にするのはもってのほかだが、新しいローン減税は、間違いなく大きな効果が期待できる。しかし、中堅デベロッパーの中には毎日の運転資金にもことかくところが少なくないはずだ。契約はできても、入居が来年では現金が入ってこない。来年1月までの空白≠埋める何らかのデベロッパー救済策が必要だ。

 遡及適用については、記者は、政府が新制度を発表した10月30日までさかのぼって適用するという合理的根拠はあると考える。発表がなければ、ローン減税を理由とする買い控え≠ヘ発生しなかったはずだからだ。

(牧田 司 記者 11月14日)