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 時は金なり スピード感に欠ける

大京の経営・マンション事業

 

 大京が大幅に業績予想を下方修正し、一連の対応策を発表した。記者は駆け出しの頃、当時の大京幹部からマンションのイロハを教わった。いまでも愛着がある。頑張って欲しいが、同社が置かれている現状を考えると、厳しいと言わざるを得ない。愛着があるがゆえに苦言も呈したい。

 同社は、バブル崩壊前の好調時には首都圏だけで約1万戸を供給しており、20%ぐらいのシェアを占めていた。マンションといえば大京であった。

 ところが、バブル崩壊後は、同社は供給戸数こそ1位の座を守り続けたが、業界内での地位は低下の一途をたどった。大手デベロッパーや新興デベロッパーがマンション事業で業績を伸ばしたのと対照的だった。同社は、双方からの挟撃を受け、守勢一方に回った。

 昨年の首都圏での同社の供給量は2000戸に満たない。時代が変わったといえばそれまでだが、あまりにも落差が大きい。5分の1程度に落ちてしまった。

 この間、平成9年に創業者の横山修二社長が退陣し、三和銀行(当時)出身の長谷川正治氏が社長に就任したあたりから、迷走を繰り返すことになる。

 長谷川社長は、大きく左にぶれた振り子を正常に戻すのに右方向に倍の力を加えるのと同じように矢継ぎ早に改革を断行した。長谷川改革は成功するかに見えた。しかし、大京の利益の源泉とも言うべき社内競合∞営業力≠ワでこそぎ落としてしまった。

 現物主義≠掲げ完成販売にこだわったのも、同社の競争力の低下をもたらした。右肩上がりの時代では完成販売は大きな武器となるが、右肩下がりでは大きなハンディとなったのは否めない。相対的な割高感を招き、カラーセレクト、間取り変更などユーザーニーズに応えられなくなったのは大きかった。

 再建は軌道に乗らず、結局、同社は平成14年、4700億円の金融支援を受け、さらに平成16年、産業再生機構から1765億円の金融支援を受けた。その翌年、オリックスが筆頭株主になった。

 それから3年。通期の純損失が510億円とは…。

 ◇    ◆    ◇

 最近の同社のマンション事業をみていると、バブル崩壊後の経営再建もそうだが、スピード感に欠けるという思いが強い。時は金なり=B刻々と変わる時代の変化に対応できていないように感じる。

 こんな事例がある。

 同社は数年前、京王井の頭線の浜田山で212戸のマンションを分譲した。ランドプランの優れたマンションではあったが、住戸プラン、設備仕様は平凡だった。それよりも記者が驚いたのは、用地取得から分譲まで4年も掛けたということだった。地域住民との近隣折衝に時間がかかったというのだが、200戸強のマンションの事業化に4年も掛ける必要があったのか。当時、三井不動産は「芝浦」「東京ミッドタウン」を開発中だったが、事業期間は6年だ。その対照的な事業スピードにあ然とするしかなかった。

 最近のマンションでは、「ライオンズ 横浜ポートサイド」がある。記者が同社の分譲計画があると聞いたのは2年前だ。横浜公社が近接エリアで億ションを分譲して話題になった頃だ。結果論だが、同じ頃に分譲していたら即日完売していたかもしれない。物件ホームページを見たら「新価格」とあった。

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 同社の高額物件にも疑問をもっている。同社は、ザ・ライオンズ<uランドの高額物件も供給しているが、地域の民力と商品企画が合致していない物件も目につく。

 ライオンズ<uランドは一般のマンションブランドとしては通用するかもしれないが、億ションを展開するには無理があると思っている。高額物件こそブランドがものを言う。あえて同社が高額物件に挑戦するのであれば、2倍、3倍のエネルギーを注ぎ、誰もが納得するようなものを供給しなければならない。

 オリックスとの連携も、マンションの商品企画に限れば効果を発揮していないように思う。「亀戸レジデンス」にそれを期待したが、オリックスは医療施設を併設しただけで、マンションの商品企画は大京そのものだった。

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 扶桑レクセルが吸収合併されるのも残念でならない。最近の扶桑レクセルはユニバーサルデザイン≠全面に掲げ、レベルの高いマンションを供給している。やや立地条件に問題があったり、民力とマッチしなかったりする物件もあるが、しっかりした哲学を持って事業展開している。今後、扶桑レクセルのユニバーサルデザインの哲学はどうなるのだろう。

 同社は、経営の立て直し策として大京リアルド、大京アステージなど不動産仲介や管理業などに力を注ぎ、既存顧客向けビジネスも拡大するという。ぜひともそうして欲しいが、周辺ビジネスの強化は10年も昔に同社が目指したことではなかったか。それが実っていないというのなら、どこかに問題があるはずだ。

 今回の対応策によってV字型の回復を見せて欲しいものだが、前途は多難といわざるを得ない。

(牧田 司 記者 11月7日)