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「2008年のマンション市場を占う」

トータルブレイン・久光龍彦社長に聞く


久光社長

 

 昨年半ばから変調をきたしていたマンション市場は、月を追うごとに悪化。不動産経済研究所の調査によると、首都圏マンション供給量は前年比18.1%減の約6万1000戸で、9年ぶりの低水準となった。また、売れ行きを計る平均月間契約率は前年比8.6ポイントマイナスの69.7%ととなり、実に16年ぶりの60%台に落ち込んだ。今年も株価の暴落など最悪の状況で年明けとなったが、このまま市場は低迷するのか、それとも復活はあるのか。マンション業界のご意見番、トータルブレイン・久光龍彦社長に今年の見通しなどについて聞いた。

「取得能力との乖離が問題。価格下げれば間違いなく売れる」

 売れなくなった最大の要因は、価格上昇に需要が追いつかなくなったからと分析。

 「アベレージで見るとそれほど上昇していないかに見えるが、これは郊外物件の供給比率が高まって数値を引き下げているためで、定点観測すると2005年から2007年にかけて東京23区で30〜40%、都下で25%、神奈川30%、埼玉・千葉で25%ぐらい上昇している。

 この激しい価格上昇によって、買いたくても買えないという状況になった。また、賃貸からの脱出メリットもなくなった。それにサブプライムローン問題が心理的な買い控えに拍車をかけ、金利の上昇不安もなくなった。この傾向が昨年6月以降に顕著になり、12月頃にボトムとなった」という。

 しかし、今後の見通しについて久光氏はそれほど悲観的ではない。

 「バブル崩壊時は、全ての業種がダメになった。マンション価格は半値に下げても売れなかった。ところが、今回はそうではない。価格を下げれば間違いなく動く。下げ幅はエリアによって異なるが、都心部から23区にかけては20%ぐらい、都下で15%、神奈川、埼玉、千葉で15%ぐらいだろう。2006年ぐらいの水準だ。

 価格を15%も下げれば利益は出なくなるが、それができるかどうか、デベロッパーの体力勝負だろう。私は、お客様が新価格≠ノノーと言ったのだから、エンドユーザーの買える価格に調整努力していく必要があると考える」

「建築費は下がらない。商品企画の充実を」

 これからの仕入れ価格、建築費などについては次のように語る。

 「今回の価格上昇は、流動化事業と称する実態はファンドなどの転がし≠ノよってもたらされたともいえる。金融が締まったことで、転がしを狙ったファンドは入札に参加できなくなるから、通常のデベロッパー同士の仕入れ競争に戻ると見ている。入札価格も妥当な値段で取引されるはずだ。ただし、建築費は下がらないだろう」

 久光氏は、商品企画についても力を入れる必要があるとも語る。

 「昨年の好調物件の特性を見ると、駅近とか複合開発物件が目立った。この傾向は今年も変わらない。それと、やはり商品企画に力を入れるべきだろう。小手先ではなく、環境問題、共用部の充実、セキュリティ、ユニバーサルデザイン、SI、外断熱など明確なテーマを持たせるべきだろう。

 つまり「2008年は、経済性プラス快適性、安全性、環境性能等を追求し、『こんな家に住みたい』というエンドユーザーの「夢」が実現する住まいを目指し、商品作りに取り組んでいくことが更に重要となる」ということだ。

 

(牧田 司記者 2月5日)

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