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過去最高のローン減税 効果は大きいが問題も多い

 マスコミ報道によると、麻生太郎首相が景気対策の一環として住宅ローン減税を過去最高とするよう指示したのを受けて、財務省は具体的な検討作業に入ったという。
 
  何をもって過去最高とするのか意見の分かれるところだが、財務省は控除額を過去最高の600万円(控除期間10年間)に引き上げることにしたようだ。つまり、これまでの過去最高控除額だった1999年から2001年の587.5万円を上回るということだ。今年12月末が期限の現行制度では、控除期間は10年、または15年の選択性で、ローン残高の上限2000万円に対し控除額は最高160万円になっている。

  これは朗報だ。相当の効果が期待できる。しかし、よくよく考えると矛盾もたくさんある。

  第一に、控除額を過去最高とする発想の貧困さだ。経済波及効果を考えれば、もっとも効果的な中堅サラリーマン層の需要を喚起する方法が考えられてしかるべきだ。10年間で600万円の所得税控除を受けられる層は、毎年1%の所得税控除を受けられると仮定すれば住宅ローン借入額は6000万円以上だし、年収にして1000万円以上だろう。

  このような層は全住宅需要層の数%に過ぎないだろう。このような層を優遇するより、住宅ローン利用者の圧倒的多数を占める、ローン残高にして2000〜3000万円、年収にして400〜600万円ぐらいの層に光を当てるべきだ。

  もう一つ、気になるのは「遡及適用」が盛り込まれない可能性が大きいことだ。経済対策は今月末に方向性が示され、年末の税制改革で論議されるのだろうが、現行制度とあまりにも控除額の差が大きい。これでは「購入は年内より、年明けがいい」とユーザーが判断することになりそうだ。買い控えに拍車がかかるのは間違いない。

  しかし、中堅のマンションデベロッパーは、今日の運転資金にもこと欠くところがあるぐらいだから、資金需要が増加する年末に向って在庫が処分できないとなれば、この年は越せないところも出てくる。それを承知の上でやるというのだろうか。

  さらに注文をつければ、住宅ローン控除制度は、本来的には景気浮揚の道具にするべきではなく恒久的制度にすべきだろうし、リフォーム、増改築などで発生するローン残高も控除対象に含めるべきだろう。さらに言えば、良好な住宅建設を促進する意味でも、環境共生型やユニバーサルデザインに配慮した住宅に対する優遇減税も行うべきだろう。

(牧田 司 記者 10月30日)