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意味のない住宅価格と年収倍率比較はやめるべき

 (社)住宅生産団体連合会(住団連)が「2007年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をまとめ発表した。調査対象は3大都市圏と地方都市圏 (札幌市、仙台市、広島市、福岡市) で、有効回答数は3,240件。

 これによると、戸建注文住宅の世帯主は20代・30代が約50%であり、その中でも35〜39歳 ( 団塊ジュニア ) が全体の23%を占めた。一方で60歳以上の割合(13%)も昨年より高くなり、若年層の増加と高齢層の増加が同時に進行。「建て替え」(36.2%)、「買い替え」(8.5%)が減少し、「土地+新築」(39.6%)が増加し、一次取得者の増加が顕著としている。

 従前住宅については、昨年度増加した持家の戸建とマンション(計48.2%)が減少し、賃貸住宅と社宅(計46.9%)の一次取得者が増加した。

 建築費(3,344万円)は昨年度と差異はないが、土地代を加えた住宅取得費(4,623万円)は、ここ数年を大幅に上回る水準で増加した。特に「買い替え」の建築費、土地代共に平均価格が上昇し、土地代は昨年度の2,060万円から3,804万円に大幅な増加となった。建築費の1u単価は24.0万円で、昨年度より5,000円増加した。

 住宅取得費の世帯年収倍率は、「建て替え」(5.6倍)「買い替え」(7.6倍)「土地+新築」(6.6倍)だった。

 贈与金は2004年度に1,159万円まで上がり、その後2005年度は1,015万円、2006年度は1,030万円という水準で推移してきたが、今年度は1,552万円と大幅に増加した。

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 この結果は、近年の地価、建築費の動向、ユーザーの購買動向などを反映したもので、フラット35の利用者調査とそれほど大きな差はない。

 注目したいのは、若年層の住宅取得意欲が極めて高いという点だ。当然のように取得価格の年収倍率も高くなっている。

 マスコミなどがいつも取り上げるのがこの「年収倍率比率」だ。例えば、東京カンテイの調査によると、2007年の都内のマンション価格(専有面積70平方bで6.122万円)は平均年収の9.85倍で、バブル時の10倍とほぼ同じとされる。住宅価格が年収の5倍以内が適正≠ニするならば、平均的なサラリーマンが都内でマンションを購入するのは絶望的ということになる。

 しかし、ローン金利や返済期間、手持ち金などを無視して年収倍率を論じるなどおよそ意味がないし、住宅価格と年収倍率は一緒に論じられるものではない。

 仮に都心の一等地でマンションを取得したとすると、20坪でも1億円を下らない。坪100万円の郊外マンションなら20坪で 2000万円だ。平均価格は6000万円となる。平均年収を600万円とするとその10倍だ。いったいこの住宅価格は高いのか安いのか、年収倍率10倍はどのような意味があるのか、誰も答えられないだろう。

 年収倍率にしても同様だ。そもそも金融機関の借り入れ条件には、年間返済額の年収に占める割合が3割前後と決められているのだから、購入価格が年収の5〜6倍になるのは当たり前だ。

 意味のない住宅価格と年収倍率比較論議はやめるべきだ。住宅取得意欲が旺盛な若年層がどうしたら年収倍率の高い@ヌ好な住宅を取得できるかをもっと論じるべきだろう。マクロデータを頼りにしたマスコミ報道は、消費者の買い控えに拍車をかけるだけだ。

(牧田 司 記者 9月4日)