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歩留まり率を考える 50%に達した「パークハイツ鶴見」

 

 貸し渋り≠ニ関係ないかもしれないが、今回は、マンションの歩留まりについて考えてみた。歩留まりとは、来場者の何割が購入申込をしたかという数値だ。かつては20%を超える物件も少なくなかったと思うが、最近はほとんどが20%以下だろう。10%を下回る物件もあるのではないか。

 それだけユーザーの見る目が厳しいということだろうが、記者は、ユーザーの目にかなう物件が少ないとも考える。人口構成も家族構成も、ユーザーのニーズも多様化しているのに、いまだに平凡な田の字型のプランが主流なのがどうも解せない。設備・仕様もどこも似たり寄ったりだ。

 記者は、来場者が少なく、歩留まりが悪いのは誰に売るのか≠ェ明確でないからだと考える。多種・多様なニーズに応えるプランにすべきなのに、平均点的なプランに収めようとする考えが理解できない。厳しい言い方だが、価格の安さが取りえのようなマンションが売れないのは当然で、劣悪な商品企画のマンションしか供給できないデベロッパーは、淘汰されるのはやむを得ないと見ている。

 話は古いが、驚異的な歩留まり率を記録した物件を紹介しよう。デベロッパーは何をすべきかのヒントになるはずた。

 若い人はご存知ないかもしれないが、昭和50年代の半ばから昭和60年代の前半にかけて、卓越した商品企画で話題を呼んだデベロッパーに日本ランディックがある。

 確か昭和57年だった。同社は全378戸の「パークハイツ鶴見」というマンションを分譲した。当時も不況下の大量供給≠ニいわれていたように厳しい時代で、しかも、立地条件は最悪だった。JR川崎駅からバス13分徒歩3分のバス便物件で、しかも準工立地という二重、三重のハンディを負っていた。運が悪いことに抽選日当日は台風の直撃を受け、どこのマンションもほとんど申込が入らず惨敗した。その後、マンションの値下げが日常茶飯化した。

 ところが、この「鶴見」は平均2倍を超える競争倍率で即日完売した。来場者は2000組ぐらいだったと記憶している。つまり、来場者の2人に1人が申し込んだ計算で、歩留まり率は50%に達したのだ。

 人気の最大の要因は、その商品企画にあった。田の字型のプランが主流だった当時(今でもそうだが)、P・Pを完全に分離したZ型プラン≠ニいう驚嘆すべきプランがヒットしたのだ。確かライトコートも2カ所付いていたように記憶している。シリーズ広告には、刻々と変わる来場者の反響・熱気が伝えられていた。

 歩留まり率が50%に達したマンションは後にも先にもこのマンションだけだろう。P・P分離、勝手口付き、ライトコート付き、フローリングなどは全て同社がヒットさせたものだ。

 歩留まり率を上げるヒントはこの「鶴見」にある。生活者の視点で商品企画を考えれば、ヒントも見えてくるはずだ。

(牧田 司 記者 8月29日)