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原弘産 開発事業から撤退へ 第3回株主説明会


株主説明会で語る原社長(大手町KDDIホールで)

 

 日本ハウズイングに対してTOBによる業務提携・事業統合を提案している原弘産は6月21日、第3回目の株主説明会を開いたが、説明会後の記者の質問に対して原將昭社長は開発事業からの撤退を明らかにした。

 6月27日に行われる日本ハウズイングの株主総会に向けた委任状争奪戦については「過半数に近い株主から賛同をいただいている。結果については分からないが、負ける戦争はしない」と勝算ありの姿勢を示し、「株主総会では30分間のプレゼンの時間をもらっている。長時間にわたるだろうから、手弁当をもっていく」などと余裕を示した。

 説明会では、集まった数十人の株主に対して、原社長は持論を展開。日本ハウズイングが管理するマンション約32万戸のうち年間4%が売買に出され、15%は賃貸に回されるとし、この顧客情報をもとに売買仲介、賃貸管理などのストックビジネス、フィービジネスを展開すれば、40億円以上の純利益が確保できるなどと主張した。


説明会会場

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原弘産・ランドマーク(合人社)・イ社の同床異夢

 記者は、この問題が表面化した当初からTOBは成功しないと見ていたが、先に日本ハウズイングの大株主であるカテリーナ・イノウエ社が原弘産側についたことで、大株主の持ち株比率が逆転、原弘産側が優位に立った。

 しかし、今回の説明会での原社長の持論を聞いて、仮にTOBが成功しても、新しいビジネスが成功する確率はきわめて低いと考えた。疑問点もいくつか考えた。

 まず、原弘産の本業である分譲事業がきわめて厳しい環境下にあることだ。同社を始め、地方から首都圏に進出したデベロッパーは何社かあるが、ほとんどがうまくいっていない。東京から地方に進出したデベロッパーも同様だ。

 原社長も同じ認識で、「これからマンションは売れない」とし、開発事業からの撤退を明らかにした。売り単価で450万円とも500万円とも言われた吉祥寺のマンション用地もファンドに素地のまま売却している。

 その上で、同社の開発担当のスタッフと日本ハウズイングの開発担当スタッフ合わせ二百数十人を新しいストックビジネスに振り向けるとしているが、人員整理をしなければ年間少なくとも20億円の人件費などが負担になってくるはずだ。

 売買仲介、賃貸管理業は、地方はともかく、大都市圏では既存の大手業者の市場占有率は極めて高いはずだ。その市場に新規参入するとなれば、そのエネルギーは2倍、3倍はかかるだろう。この点について原社長は「手数料は3%でなくていい。値下げすればいい」と語ったが、そのようなことをすれば業界の反発を招くのは必至だ。

 そもそも、管理会社が保有する顧客情報を第三者に提供できるはずがない。原社長の主張は絵に描いた空論といわざるを得ない。

 もう一つ、不思議に思うのはカテリーナ・イノウエ社の考えだ。両社に出した公開質問状では、再三にわたって「株価向上」が文言として出てくるが、企業価値と株価とは必ずしも一致しないのは常識だ。ライブドアの堀江氏が市場から退場を余儀なくされたのも、拝金主義に凝り固まっていたからではないか。今回の騒動は、原社長自身が批判するハゲタカ軍団≠ニ同じで、お金のために狂奔する姿勢が見え隠れする。

 原弘産と共同戦線を組むランドマーク(合人社)、カテリーナ・イノウエ社も一枚岩ではなさそうだ。同床異夢、TOBが成功してもいつかほころびが出そうだ。

 

(牧田 司 記者 6月22日)