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全国に広がる建築物の「絶対高さ規制」  A

「住民は知るべき 行政は伝えるべき」大澤昭彦研究員


大澤昭彦氏

 前回の@で紹介した東京工業大学大学院社会理工学研究科・財団法人土地総合研究所研究員・大澤昭彦氏(33)は「絶対高さ規制」について、次のように語っている。

「紛争に発展しなければ、規制の必要性を認識しない状況終わらせるべき」

 「現状の土地利用規制は、実際の土地利用の状況に比べて規制内容(容積率など)が緩い。さらに各種規制緩和の影響で、周辺から突出した高層マンションが多く建設され、紛争を招来している。

 あまりに従来の市街地の姿とかけ離れた高層マンションに違和感を表明する周辺住民の考えは理解できる一方で、当然もっと高度利用すべき場所もあるだろうから、現状の市街地の姿を前提としてまちづくりを考えて良いのかという疑問もある。

 したがって、高さ制限をかけて環境を守る場所と、高度利用を図る場所をあらかじめ決めるメリハリのある規制が重要。例えば、@厳しく制限する地域(緩和措置なし)A一定の制限を課すが、周辺環境に配慮するなどの条件を満たした場合に制限を緩和する地域B高度利用を促進する地域――この3つくらいに分けることができるだろう。

 こうした規制を行うためには、まず、住民は自分たちの暮らす地域にどのような規制がかけられているのかを知るべきであるし、行政も積極的に伝えるべきである。

 容積率200%で比較的まとまった敷地があった場合に何階建てのマンションが建ち得るのかなど、住民がイメージしやすい形で規制内容を伝える必要がある。その上で、どこを高度利用させて、どこを規制強化していくのか、さらにはどのような規制内容にするのかを議論していくことが求められる。

 紛争に発展しなければ、高さ制限の必要性を認識しない(できない)という状況はもう終わらせるべきではないか」

◇   ◆   ◇

 大澤氏は、筑波大学理工学群社会工学類で都市計画を学んだ後、財団法人土地総合研究所研究員として、さらに東京工業大学大学院社会理工学研究科・中井検裕教授のもとで研究活動を続けている。

 大澤氏は、「絶対高さ規制については、私より他にもたくさん研究されている方がいる」と否定したが、大澤氏は全国隈なく調査しており、自治体動向の捕捉率は100%近いと思われる。大澤氏の全国の絶対高さ制限についての研究論文は「土地総合研究」( Vol.14 No4 2006年秋号「高度地区を用いた絶対高さ制限の指定状況 〜2002年から2006年までの最近5カ年について〜」)に詳しい。

※次回は、大澤氏の論文「用途地域の100尺(31b)規制の設立根拠について」を紹介します。

(牧田 司 記者 6月3日)