RBA HOME> RBAタイムズHOME >2008年 >

これでいいのか 川に背を向ける日本橋の街


船上でハープを奏でる木田智之氏と歌う木田直子さん

「 open! architecture 建築のまち・東京を開放する」

 デベロッパーでは三井不動産が協賛に名を連ねている「open! architecture 建築のまち・東京を開放する」 ( 主催: open! architecture 実行委員会、 UIA2011 東京大会日本組織委員会 ) が5月14日から17日にかけて行われた。

 期間中は日銀本店、三井本館、三菱倉庫など普段は公開されていない都心の24の建築物が公開されたほか、トークショー「フォーラム・東京を語る」、「都市楽師プロジェクト 10 人のラッパ吹きと、名建築たち」、「都市楽師プロジェクト水上の音楽」などのイベントが行われた。

 記者は、忙しくて建築物は見学できなかったが、トークショー、都市楽師プロジェクトを見学した。

 トークショーでは、東大総長の小宮山宏氏と建築家の芦原太郎氏がそれぞれの立場から街のあり方、東京の街の現状などについて語りあった。小宮山氏は、自ら「エコハウス」を建築し、エネルギー消費量を9分の1にする取り組みを行っていることをユーモアを交えて語った。

 都市楽師は、中世のヨーロッパの結婚式、葬式、死刑執行などの際に演奏されたもので、わが国の昔のチンドン屋や葬列のように街中を練り歩いた。今回は、街中を練り歩くわけには行かず、三井本館と三越本館の間で舞台が整えられ、バグパイプ奏者などによって演奏された。

 水上の音楽では、日本橋川を船で下り、船上で木田智之氏がイギリススコットランドの古楽器 Clarsach (金属弦ハープ)を奏で、木田直子さんがスコットランドの民謡などを謡った。

    
左からトークショー、都市楽師のコンサート(三井本館前)

◇   ◆   ◇

 記者は、生まれて初めて日本橋川を船で下った。日銀の隣の常盤橋から亀島橋あたりまでを往復する約1時間の船旅≠セった。

 これまでは日本橋上から汚い川を眺めたことしかなかったが、改めて汚い川の再生が必要なことを思い知らされた。日本橋川が汚くなったのは、2つの理由があるようだ。一つは、もともとこの川は飯田橋あたりまでフラットで、ほとんど水流の動きがない自然的条件によるものだ。御茶ノ水当たりにはコイが泳いでいるが、日本橋の下流には魚は住んでいないようだ。

 もう一つは、川の上に高速が走っているためだろう。川の中には道路を支える橋脚が林立し、道路が川の上の視界をさえぎっている。美しいハープの音色は騒音によってかき消された。

 日本橋の再生に取り組んでいる水先案内役を務めた二瓶文隆区議が「川沿いのビルはみんな川に背を向けて建っている」と語ったように、川岸はコンクリート塀になっており、ビルから川を眺めるような設計にはなっていなかった。日本橋川に東京の汚濁を全て注ぎ込もうとするように見えた。

 こんな悲しい光景は改めなければならない。川ばかりか、川沿いに建つ日銀本館、野村證券ビル、三菱倉庫ビル、日証館などの歴史的建築物も泣いている。建物は後ろ側から眺めるのが美しいといわれているはずだ。

 船上で解説役を務めた法大大学院エコ地域デザイン研究所 水辺空間とまちの再生研究会プロジェクトリーダー・阿部彰氏は「高速道路を取り壊すことも含め、満潮と干潮の潮の流れと水門を利用して流れる川にする提案を行っていく」と語った。

  
左から「水上の音楽」(真正面に三井日本橋タワーが見える)、二瓶、阿部の各氏


(牧田 司 記者 5月19日)