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野村不動産HD鈴木弘久・高井基次・北村章各氏 

環境激変に前向き姿勢示す

    
鈴木社長(左)と高井副社長


 野村不動産ホールディングスグループは4月17日、恒例の記者懇親会を行った。鈴木弘久社長は、冒頭の挨拶で次のように語った。

 前期決算は、過去最高の利益を達成する見通しであり、中期経営3カ年計画の初年度の年として順調なスタートを切った。資産運用残高は1兆円を超えるまでにいたった。事業環境は激変しているが、次の成長へ向けて布石を打っていく。

 分譲マーケットは、郊外部を中心に取得能力を超える価格の上昇で、マンションの売れ行きは昨秋以来鈍化しており、富裕層向けも株の下落などで取得意欲が減退している。しかし、当社の新規物件の来場者は落ち込んでおらず、2月に販売をスタートした全257戸の「練馬」の物件は坪単価290万円ながら、1期150戸のうち126戸を契約できた。用地費は落ち着きを見せてきており、花小金井駅から徒歩5分の約250戸の戸建て用地を取得したし、先月は23区内のJR駅から徒歩1分で約800戸のマンション用地も取得した。

 証券化マーケットは、サブプライムローン問題をきっかけに取引が激減、リートの成長も鈍ってきており、業界再編に動くこともありうる。当社は、このような環境の変化をチャンスとして捉え、次なる成長に向けて今から2次中期計画を策定して磐石なものにしていく。

 次のステップとしては、商業施設の開発・運営にまず力を注ぐ。成長できる事業モデルを築いていく。海外投資についても、海外投資家を呼び込み、野村證券ともタイアップしてアジア中心にホテルなどを展開していく。どの地域で誰と組むのが最適か、グループ全体の成長へ向け本腰を入れていく。

圧倒的なブランド力支えるドブ板営業

 記者は、今回の記者懇親会で注目したのは、ほかの事業はよく分からないからでもあるが、鈴木社長と、井基次住宅カンパニー長副社長、北村章野村不動産アーバンネット社長がそれぞれ何を語るかだった。

鈴木社長の言葉は、先に紹介したとおりだ。市場環境の激変に対して前向きで取り込もうとする姿勢がよく伝わった。

 高井副社長は、記者団へのリップサービスを忘れない人で、毎年のように面白い話をする。一昨年は「23区から坪単価200万円以下が消える」と語ったが、その通りになった。昨年は一転して、「都心部でも7000万円、郊外部では4000万円から4500万円がユーザーの購買能力の限界」と語った。これもその通りとなった。

 そして今回。高井氏は「時期は読めなかったが、このような厳しい環境にいつかなると思っていた」と語った。それでも今後の事業展開については「適地はまだ高いが、今買わないとチャンスがなくなる」などと積極姿勢を見せた。また、同業にとっても参考になる話をした。それはニッチ♂c業についてだった。

 高井氏は、テレビ、新聞、雑誌、チラシ広告だけでは十分集客できないのが今の市場であり、同社は商店街、ライオンズクラブ、病院、大学、役所、弁護士など士≠フ団体、富裕層の集まりなどを隈なく回っているという。

 スーパーや役所のカウンターなどに同社のマンションのチラシが載っているのは、こうしたドブ板営業を行っているからだ。圧倒的な企画力、ブランド力がある同社がここまでやっているのだから、同業他社はその2倍、3倍のエネルギーを効果的に注がないと太刀打ちできないのは当然だ。

 こういったドブ板営業は今に始まったことではない。かつてある会社の営業部長は、通勤定期とは別に丸の内線の定期券を購入して、毎日のように大手企業回りをして企業提携を増やした。他社と同じことをしていたのでは、厳しい時代には生き残れない。

 高井氏は「これからは駅から10分以上はやらない」「うちは大型(複合開発)が弱い。強化したい」とも語った。

 北村社長も、次のように流通事業について語った。

 「当社はいつも右肩上がりの目標しか掲げない。リノベーション事業を立ち上げたが、これで市場を活性化させていく。これからは法人向けを強化する。一般仲介は市場変化にも十分修正ができる。新入社員が72人入ったが、半年後には戦力になる。販売受託は、断りを入れるほどの案件を抱えている。今年度の売り上げ計上の半分はすでに達成している」

 どのような環境でも、経営トップが逆風に敢然と立ち向かう姿勢を見せないといけないことを、同社の懇親会から記者は学んだ。 

 

(牧田 司記者 4月18日)

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