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手放しで喜べぬ新都心リアルの「不動産流動化事業」

第一弾は「ダイアパレス立川若葉町」 約1割下げ

 新都心リアルコーポレーションの「不動産流動化事業」第一号物件が明らかになった。ダイア建設が昨年末に分譲開始していた「ダイアパレス立川若葉町」だ。

 物件は、 JR 中央線国立駅からバス約7分、バス停から徒歩6分の立川市若葉町に位置する全35戸の規模だ。同社が買い取ったのはそのうち15戸で、専有面積は約71〜74平方b、価格は3290万〜4046万円(最多価格帯3700万円台・3,900万円台各3戸)というものだ。建物は今年3月5日に完成している。

 ダイア建設が販売を開始したのは昨年11月下旬からで、当初の専有面積は約61〜74平方b、価格は2934万〜3999万円、坪単価は164万8000円。投資ファンドのケネディクスに売却するまで20戸を契約していた。

 ダイア建設がいくらで売却したかは不明だが、新都心の再販価格は坪単価にして150万円程度だと思われる。つまり坪単価にして約1割15万円程度、グロスで300万円強値下げして分譲されることになったようだ。

 マンション買い取り・再販が目的のこの「不動産流動化事業」が定着するのかどうか、また、マンションの再販制度はユーザーにとっていいことなのかどうかも考えなければならないので、いくつか問題点を指摘してみたい。

 まず、ダイア建設の当初値づけの妥当性について。立川駅圏はこのところマンション価格が急騰しており、駅近の物件は二百数十万円で、徒歩圏だと200万円以上が相場だ。バス便物件でも坪単価は200万円近くしている。

 ダイア建設の物件は、バス便であるうえ、バス停から徒歩6分というハンディを考えると、同社の値づけは妥当と思われる。分譲開始から売却までの数カ月で 20 戸を契約しているのだから、売れ行きもまずまずだ。同社が残戸数を一括で売却したのは期末の決算対策ということだろう。

 同社は、一括売却するまで35戸のうち20戸、つまり6割近くを定価≠ナ販売したと考えられる。利益率を2割と仮定すれば、同社は残り15戸のうち7〜8戸を売れば赤字≠ノはならなかったはずだ。逆に言えば、15戸を半値、坪単価にして約83万円で売っても利益は出ないまでも、赤字にはならない計算になる。

 しかし、ダイア建設が原価割れしてケネディクスに売却したとは考えづらく、いくらかの利益を確保したうえで売却したと考えられる。坪単価にして100万円ぐらいではないだろうか。

 新都心にとってはどうか。仮に坪100万円で買って、150万円で売れれば事業として十分成り立つ。用地仕入れから建設までのコストが全くかからないのだから、これほどうまみのある事業はない。

 つまり、ダイア建設にとっても新都心リアルにとっても損≠ヘないことになる。このシステムが機能すれば、何も問題はないはずだ。

かえって在庫を増やす「不動産流動化事業」

 ところが、このシステムには大きな問題も潜んでいると思う。ユーザーの立場があまり考慮されていないことだ。

 新都心リアルは、同社の「不動産流動化事業」について、「デベロッパー等に対し、在庫整理、資金回収を為す事で、在庫を抱えた不動産マーケットの正常化に寄与」「ユーザーに対しては、現在の割高なコスト積み上げのマーケットを正常化(約1 〜3割の価格値引き)を果たす事で、ユーザーにも寄与」するとしている。

 確かに、ダイア建設も、仕掛けたケネディクスも新都心リアルも万々歳≠ゥも知れない。ユーザーにとっても、今回のケースでは、当初の販売単価と再販後の単価はそれほど差異がないから、定価で購入した人も損をした≠ニ考える人は少ないだろう。

 しかし、値下げ幅が坪数十万円、グロスにして1000万円以上となったらどうだろうか。入居と同時に1000万円、2000万円も評価額が下がるのでは、マンションなんか怖くて買えないということにならないか。マンションの値づけに対する信頼性は根底から崩れるだろう。とくに信用力、ブランド力のないデベロッパーのマンションは、青田の段階では売りづらくなり、益々在庫が増える懸念もある。「不動産流動化事業」の定着は、マンション在庫を増やすという皮肉な結果をもたらしかねない。

ユーザーの犠牲の上に成り立つ事業

 もう一つ、マンションの値下げ販売は、ユーザーにとってメリットがあるというのも疑問だ。新都心リアルの言うユーザーとは、値下げマンションを買うユーザーであって、大多数の正価で買うユーザーのことではない。新都心リアルが販売する適正価格マンションは、不適正≠ネ価格でマンションを購入したユーザーの犠牲のうえに成り立つシステムと言えなくもない。

 理論的には、値下げ幅が大きければ大きいほど、消費者の負担も大きいということになる。これは明らかに自家撞着だ。つまり「不動産流動化事業」は、明らかに問題を先送りした、最終的に消費者にツケを回す転がし≠ノ過ぎないのではないだろうか。わが国のバブルが崩壊したのも転がし≠ナはなかったか。業者間で転がしていれば問題は表面化しないと考えているとすれば、それは大きな間違いだ。

 また、ファンドに一括で売却するデベロッパーは、単体では赤字を免れるかもしれないが、信用≠ニいうお金では換算できない大きな財産を失うことになりかねない。

 「不動産流動化事業」を手放しで喜べない理由はここにある。

 

(牧田 司記者 4月10日)

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