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  マンション格付けサイトに欠けているもの

 

ユーザーが知りたいことはほとんどなし

 わが国で初という一級建築士による新築マンション格付けサイトが、来年1月からの本格スタートを前に試験的にオープンされたので、早速見てみた。

 「格付けレーダーチャート」、「一級建築士による総評」、「チェックシート」によって構成されており、格付けレーダーチャートの評価項目は、@駅近A構造・耐震BセキュリティCバリアフリーD公園・緑の多さE買物の便利F駐車場率G周辺の静けさH遮音性――の9項目で、それぞれの項目について1〜10までポイントを付けて評価されている。このほか、総評やチェックシートで、マンションの特徴などがそれぞれ記述されている。

 記者は、このようなサイトについて、批判するつもりは全くない。ネット時代だ。このようなサイトが増えるのは当然で、マンションを選択する際に役立つ情報が得られるのは結構なことだ。

 しかし、どうしても言わざるを得ないことがある。いかめしいサイトの名前にしては、内容がいま一つだということだ。ユーザーが欲しい情報はあまりない。

 ユーザーがマンション購入を検討する場合、重視するのは価格、交通便、立地・環境、間取り、生活利便施設、教育環境などで、売主や施工会社の信頼性も重要なポイントになるし、街の将来性も考える。

 しかし、このサイトの評価項目には、肝心の項目が欠けている。レーダーチャートは、物件概要を単に数値化したものに過ぎない。総評、チェックシートも、パンフレットを読めば分かることがほとんどだ。

 そもそも、様々な評価項目を数値化すること自体に無理がある。記者も20年以上前に試みたことがある。しかし、長続きしなかった。かつて財団法人・不動産流通近代化センターも、マンションや戸建ての価格査定マニュアルを作成したことがある。しかし、これもほとんど普及しなかった。

 駅近を「10」としたところで、バス便を「4」としたところで、そこに何の意味があるのか、結局は分からないのだ。極端に言えば、それぞれの評価事項を数値化する作業は専門家でなくても、誰にでもできることだ。

 駅近は通勤には便利かもしれないが、その半面、商業系立地などの場合は、将来にわたって日照・住環境が担保されるのかどうかの不安がある。また、子育てのことを考えれば、駅近より駅からの距離がある低・中層住居系地域のほうがいい場合もある。要するに、駅近がいいのか悪いのかはユーザーが決めることなのだ。

 さらに、このサイトの根本的な問題点は、ユーザーが購入に際してもっとも判断に悩む価格の妥当性、売主、施工会社、設計者(会社)の信頼性などはほとんど語られていないことだ。

 マンションも商品だ。価値は価格で示される。その価格に対して評価がないというのは致命的だろう。記者は客観的に評価しろといっているのではない。周辺物件と比較することは可能だが、単に価格を比較してみたところで、これもまたそれほど意味はない。それよりも、評価者の視点でいいからきちんと評価すべきといいたい。

 そのほか、資産性はあるのか、瑕疵が見つかった場合、売主や施工会社はきちんと対応してくれるのか、設計者(会社)はどんなところだろうかも知りたい。評価するのは一級建築士だから、身内のことを語るのは得意なはずだが…。

 これでは、評価されたマンションデベロッパーも満足しないのではないか。デベロッパーとしては、自社のマンションが専門家にどのように評価されているのかがもっとも知りたいことだろう。

 ユーザーやデベロッパーが本当に知りたいことを伝えるサイトが出てきて欲しい。その点で、単身者・DINKS向けに特化した情報サイトは、いかにも女性を対象としたサイトらしい、きめ細かな配慮がなされていると思った。

 

(牧田 司記者 12月10日)

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