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リビングコーポ 究極のニッチ1棟売り賃貸マンション事業

 

 SD建築企画研究所・清水修司社長が主宰する「REB−100社の会」が11月29日、都内で開かれた。今回が3回目でテーマはワンルーム市場についてだった。

 東京カンテイ市場調査室長主任研究員・中山登志朗氏の報告やワンルーム各社の事業紹介のあと、「既成概念の打破(用地取得から完成引渡しまで7カ月)によりワンルーム一棟売りトップ企業が上場達成」という触れ込みで紹介されたリビングコーポレーション(三輪秀一社長)執行役員新規事業開発部長・近江惠氏の話にはわが耳を疑った。

 同社はホームページによると、「同社が企画・デザイン・設計した賃貸デザイナーズマンション(「MODULOR 」シリーズ)を建設し、不動産ファンドや個人富裕層などの投資家に一棟単位で販売する」事業を展開しているデベロッパーだ。会社設立は平成2年で、賃貸1棟売りを始めたのは平成13年。昨年6月、マザーズ市場に株式上場。今年9月、SBIホールディングス(北尾吉孝社長)の株式公開買い付けにより同社が54.4%の株式を取得して筆頭株主となり、 10月に今井武一前社長が退任、三輪副社長が社長に就任している。18年12月期の売上高は80億円、経常利益は5億円。

 近江氏は、おおよそ次のように語った。

 同社が手がけるのは都内のみで、最寄駅から10分以内。1分でもそれ以上となると手がけない。敷地は50坪ぐらいで4階までとし1棟20戸ぐらい。容積率は200%ぐらいのエリアで、商業地は除外する。エレベータはコストがかかるので設置しない(4階建てだから設置義務はない)、バルコニーも設けない。用地取得からファンドに売却するまでの期間は7カ月。年間20〜30棟を建設しているという。まちのづくりにも貢献し、環境悪化も招かないという。

 これを聞いて、記者は驚嘆した。4階建てまでとし、エレベータを設けないのはよく理解できる。入居者にとって不便だろうが、コストを抑えたい投資家にとっては、それで入居者が集まるなら願ってもないことだ。

 しかし、バルコニーを設けないというのはどういうことだろうか。最近の若者はバルコニーをゴミ置き場のようにしているケースもあるが、バルコニーは一般的には避難口になっている。避難口はどこに設けるのだろう。

 50坪の敷地で容積率が200%、1棟20戸ということは、1戸5坪(約15平方b)ぐらいだろうか。バブル前まではワンルームと言えば5坪だったが、最近では20平方b以上が一般的だ。果たしてそれで市場性があるのだろうか。(社内の若い女性に聞いたら、5坪のワンルームは男子学生なら需要はあるとのことで、女子学生でも大丈夫かもしれないということだった)

 同社の1棟売り賃貸マンション事業は、是非はともかく、間違いなく究極の1棟売りビジネスだろう。近江氏自ら語ったようにニッチ≠セから成功するのだろう。

良好な賃貸ストックを確保して欲しい

 記者は、ワンルーム草創期の頃、マルコー、杉山商事、ニチモ、ライベックスなどのマンションを徹底して取材したことがある。天井が低く、隣の音が筒抜けだったのに驚いたことがある。ライベックスの破綻で裁判沙汰になった「八王子カレッジタウン」には何度も足を運んで取材した。管理人室が区分所有対象として分譲されていたのにはびっくりもした。

 バブル崩壊後は、ワンルームの取材はほとんどしなくなったが、有望な事業分野だと理解している。しかし、投資効率も大事だろうが、基本的には賃借人が確保できるかどうかだろう。5坪のワンルームが成功するとはとても思えない。「八王子カレッジタウン」は、完成して20年ぐらいだろうか。売却すれば坪50万円でも無理だろう。投資家は投資資金を回収できたのだろうか。

 

(牧田 司記者 11月30日)

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